第四話 INグレンダン(その2)
[9/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
としない。
まず動いたのは年齢の低い者達、かつて共に切磋琢磨していた者達が襲い掛かる。未だ研鑽半ばにして一撃は重厚には遠いが、それを各々が自覚し速度に重点を置き多数の連携でもって反撃を受けないようにしている。
次に動くのは壮年の者達、ニーナ達の親の世代でかつて指導を受けた者も多くいる。その一撃は重く、若者と比べ未熟の域を疾うに脱し練達の動きで隙を作り出さない。
そして老年の者達、速度、重さ共に他の世代の者たちに劣るがそれを補えるだけの経験と老練の技を持って襲い来る。
これら大きく分けて三つに分類される者達が互いに連携してくる。もとよりアントーク家は武芸者の名門であり、一流に名を連ねる者も多い。ただ一人に対するにはあまりに過剰な戦力といっていい、通常であれば。
それに対するニーナは防戦一方となっていた。剄の奔りは鈍く動きも悪い、本来のそれとはかけ離れたものだ。理由は明らかでニーナ自身に交戦の意思がないからだ。
「何故ですか父上、まさか狼面衆に……」
「言っておくがニーナ、我らは操られているのでも何者かに脅されているわけでもない。己自身の意思によってのみここでお前と戦っているのだ」
もしかして、と思った理由も否定され途方に暮れるニーナ。そこに己の内より響く声がある。
『何をしている主よ、なぜ戦わぬ?』
雄々しき雄山羊の姿をした廃貴族、メルニスクだ。
『出来るものか、なぜ父上たちと戦わねばならないんだ。なぜ世界の終わりを望むんだ?』
『知らぬ。だが主よ、主の死はこの世界の終わりと同義となろう。それでも尚戦いたくないというのであれば逃げればよい。今なら世界とならぬことも可能だ、そののち世界がどうなるか我にはわからぬが』
メルニスクが現実を突きつける。だが決して『世界を守れ』と強制はしない。かつて自律都市の電子精霊として都市民を護る存在であったが、己の都市を失いニーナを主と定めて後ニーナに従っている。たとえニーナがここで道を違えようとも、あるいは世界を壊すとしても従うだろう。無論ニーナが世界を壊すなど考えるようならば最初から主に選んだりしないが。
『そんなことできる訳がないだろう、私には無理だ』
『ならば戦うしかない。如何なる道を歩むにせよ選択できるのは勝者のみ。真意を質すとしても今は退けねばならぬ』
メルニスクの言にようやくニーナも決意する。いや、せざるをえない。答えを得る為に今は戦う、と。
「メルニスク!」
『承知した、主よ!』
メルニスクの名を呼ぶと同時に剄量が跳ね上がり黄金の光が滲み出す。双鉄鞭をしっかり握りなおすと殺到する『敵』をしっかりと見据え、一回転しながら振り下ろす。
沸き起こる風圧にニーナに届くことなく動きが止まる。そしてそれはニーナにとっては好機以外の何物でもない。
活剄衝剄混合変化
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ