第四話 INグレンダン(その2)
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まらず世界に及ぶ。その価値をアントーク家が故意に利用しようとしなくても利益は計り知れない。
無論当主とならずともニーナと家との繋がりが断たれるわけではない。しかし当主となればその周囲から見た関係性は段違いとなる。例え世界を回るとしても価値が減ずることはないのだ、と。
だがニーナはその裏にも気づいていた。ニーナとアントーク家を繋げる事によるメリットだけでないデメリット。世界に対し不満を持つ者、世界を壊そうとする者の害意がアントーク家に向かう事も容易に予想できる。
もう一つはニーナに『家』を作ること。常にシュナイバルにいたジルドレイドはともかく、離れるかもしれないニーナ。時が経ち人は変わろうと、『家』という確固たる存在が変わることは無い。一種の帰属意識だ。
当主としての言葉の裏に隠された親としての想い。そんな想いを感じ感謝の念を禁じ得ないがそれでも懸念することがあった。
「私はシュナイバルを離れるだけでなく敵となるかもしれません。何一つとして家に益をもたらさないかもしれない。それでもいいのですか?」
それは思いがけず不利益をもたらしてしまう、のではなく意図して敵に回ることを想定した言葉。事実ツェルニのため世界の敵となることも辞さなかったニーナである。
「判らない未来の事を心配しても仕方ない。お前は気にせず思いのままにすればよい」
それは自分の為に利用すればよいという言葉に他ならない。あくまでニーナのことを一番に考えての事なのだ。そうとなればニーナには頭を下げる選択肢しかない。
「父上、ありがとうございます。ですが旅立つ時には退きたいのですが」
「それは考える必要はない。あの方も何時も当主だったのだ。それと出るときにはこれも持っていくがいい」
現当主はアンドレイだが、表に出ない大祖父もまた当主であった。ニーナも同じく当主であり続けるのだ、と。
そう言って精緻な彫刻が施された小さな箱を大切に持ってくる。促されその蓋を開けると二個の錬金鋼があった。
「これは……大祖父様の錬金鋼ではありませんか」
「そうだ、これも持っていくといい」
大祖父が使用し、ニーナが遺品として持ち帰った錬金鋼。天剣と同じく剄の許容量が半端ではなくあらゆる種類の錬金鋼の長所を兼ね備えるという逸品。
「ですがこれは大祖父様の形見では。それに私はもう持っています」
だがニーナにとっては敬愛する大祖父の形見という思いが強い。更に言うなら既に同じような物を三個持っている。
気持ちの上でも必要という意味でも持っていく理由がない。
「そうだ、あの方の錬金鋼だ。だが、このまま死蔵されるよりはお前が使う方があの方も喜ぶだろう。お前以外に使い手もいないからな」
確かに必要とする者がそう簡単に現れる筈がない。それでもなお逡巡するニーナの後押しをする言葉が
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