第四話 INグレンダン(その2)
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を示し、座ったところで用件を切り出す。
「アントーク家を継ぐ気はないか?」
「えっ!?何故ですか」」
予想外の言葉に驚く。元々家は弟が継ぐと予想していたためだ。
アントーク家は武芸者の家柄の為、基本的に武芸者である者が継ぐのが不文律となっている。
姉二人は一般人であるが武芸者で年長のニーナが継ぐと単純には思うかもしれない。
しかしニーナの母が一般人なのに対し弟の母は武芸者であるため武芸者の血は弟の方が濃く、弟が家を継ぐと周囲も考えていた。とはいえニーナ自身義母や弟を嫌っているなどという事はなく、弟が継ぐとしても異論を唱えたりする心算は欠片もなかった。しかしそのことで父や母が自分に対し一種の引け目を持っていることも解っていた。
「ルカが継ぐと思っているのは私も分かっている。だが今となればお前が継いでも誰も文句を言いはすまい。大祖父様同じくシュナイバルの守護神となるお前であれば、異議のありようもないだろう」
一門の当主となる、それは『家』というものが大きな意味を持つ社会においてとても大きな意味を持つ。同じ能力の武芸者がいるとして片方が武門の当主であれば、もう一方との待遇の差は歴然となる、そういった恩恵は計り知れない。
「いえ、私には無理です」
だがニーナはそれを固辞した。
「世界を見て回りたいと思っています。それに私は先代のように人の身から外れるかもしれません。更に言うならばルカが継ぐと、私のみならず皆が既定としている所へ割り込んでは悪しき前例となりましょう」
断りの言葉を連ねるニーナにアンドレイはしばし逡巡すると意を決したように新たな言葉を紡ぐ。
「確かにお前の言うとおりだ。だがあえてアントーク家当主として言うならば是非にも継いで貰いたいのが本音だ」
「どういう事ですか? 父上」
家のためにも継がない方がいいといった自分のいう事に理解を示したにも関わらず、家の為に継いで欲しいというアンドレイの言葉が理解できないニーナ。
「大祖父様はシュナイバルの守護神だった。お前は云わばこの世界の守護神となるのであろう。大祖父様が何時から居られたのか知る者はいない、全くと言っていいほど表には出て来られない方だったがそれでもあの方によってアントーク家はシュナイバルにおける立場をより強固にしていたことは間違いない」
当然だが大祖父の威光におんぶにだっこだったわけではない。大祖父を抜いてもそれだけの待遇を受ける武門として、誰からも後ろ指を指されないだけの実績を誇ってきたという自負と誇りがアントーク家にはある。
だが大祖父の存在がより強い影響力を持つ武門としていたこともまた、疑いようのない事実である。
語られたのは個人の感情を置き去りにした『家』の為の論理。
まして世界の守護者となるニーナの影響力はシュナイバル一都市に留
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