第四話 INグレンダン(その2)
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相手に貫いたという実績がある。
だが今回は貫けなかった。
それはディックの時は相手の理由もはっきりしており、それ以外に選択肢は無かった。しかし今回は理由も確定できずにいたため決断出来なかった。
さらに言えば試しだと確信した為に力を発揮できた。だが本当に殺すつもりで戦ってきていたら、命のやり取りを自分は出来ただろうか。答えは出ない。
「なれば私達もこの戦いを続ける……と言いたいところだがこれ以上は無意味だ」
ニーナが戦いを挑んだ理由を読み取ってしまった以上続けることに意味が無くなってしまった。
ニーナが悟らなければ意思が固まるまで、どのような結果になろうとも続ける心算だったが。周囲に倒れている者も一様にホッとした表情を見せる。彼らもまた理解と納得はしていても気分よくやっていたのではない。
「しかしよく我らの真意を見抜いたな、かつてのお前はもっと硬かったが。ツェルニで良い影響を受けたのだろう」
父親の勝算は嬉しいが素直には喜べない。決して自分で気付けたわけだはないのだから。
「いえ、私の力ではありません。共に歩む戦友が気付かせてくれました」
「そうか、よき仲間を持ったのだな」
「はい、私も誇りに思っています」
満面の笑みで答えるニーナに周囲からも笑顔が零れる。
その間にも倒れ伏した者達に治療が行われ、順次運ばれていく。
本来なら当主であるアンドレイが最初に治療されるところだが、ニーナとの話を妨げないよう後になっている。
「それでニーナ、お前はこれからどうするつもりだ?」
「まずは修行の続きをしたいと思っています」
「修行?」
「はい、私はもともと途中でツェルニへ旅立った身です。基礎は続けていましたが、それ以上は我流に過ぎません。ですから我が家での修行を終えておきたいのです」
その理由になるほどとアンドレイも思考する。武門の当主として自己の流派がどれ程珍しいかはよくわかっている。
無論我流が悪いのではない。つまるところアントーク家の鉄鞭術を学ぶという事は『模倣』である。対して我流とは『独創』といえる。
単なる非常識・無分別を独創的というのは問題外である、が模倣から独創を生み出すのはある程度以上のレベルにあれば当然である。例えるならルッケンスの『絶理』がこの『独創』に当たる。
だがニーナはアントーク家の『模倣』を終えていない。そこで基礎をもう一度固めようというのは十分に理解できる話だ。
「わかった、ではそのようにしよう」
そして、六年ぶりにシュナイバルでの鍛錬の日々が始まった。
ニーナがシュナイバルに戻って幾らかの時が過ぎ、実家での修行も終わりが近づいていた。そんなある日父親のアンドレイに呼び出された。
「お呼びですか、父上」
入ってきたニーナに向かいのソファー
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