第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
エピローグU:再会への序章
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からこそ、彼がどんな思いでこの場所に辿り着いたのか。今は変わってしまったかも知れないけれど、その切っ掛けは決して後ろ向きなものではなかったはずだ。どんなに歪んでしまっていても、彼が妻を想っていたのはクライアントを観察する過程で理解していた。妻の死に罪悪感を抱かない限り、こんな場所に足を踏み入れるはずがない。
だからこそ、ピニオラには確信があった。
グリムロックの一途さと愛の深さには一定の評価を下していた。罪を償うという意思を以て彼は監獄へ踏み入れた。それだけ材料が揃えば、安心して実行できる。それを裏付けるようにグリムロックは力なく首肯して、ようやく声を漏らした。
「………私には、分からなかった。…………妻の思いが、願いが、見えなかった。それらの本当の意味を知ろうともしなかった………自分の理想を押し付けて………私は………私は…………ッ!」
軋むような声で、グリムロックは吐露する。
自身の受け入れねばならない罪、今もなお理解できない妻の本当の姿。
孤独の中でどれだけ彼は堂々巡りの中を彷徨ったのか、摩耗した思考の中でどれだけ?いたのか。
許される筈のない罪を背負って、どれだけ苦しみ足掻いたのか。その思いをピニオラは理解し得ない。それでも、被害者に向き合うこと――――その悔いる気持ちを折れないように見守ることは出来る。
「でしたら、これからは余所見も振り返ることも出来ないですねぇ。わたしなんかが言うのもおかしな話なんでしょうけれど、理解しようとしているのでしたら、まだきっと終わりではないです。だからせめて、奥さんにこれ以上愛想を尽かされないように頑張るしかないですよねぇ」
「………なんだか、君にそう言われるのは心外なのだが」
「ヤですねぇ。共犯者同士なんですから一蓮托生ですよぉ。これからお向かいさんなんですから仲良くしましょ?」
「……………………まあ、良くも悪くも縁があったというわけか」
格子の先、向かいの牢にいるグリムロックの顔を見て、ピニオラは少しだけ安心する。
惑いや怯えの色を湛えた瞳からは、それらが完全に払拭された様子こそないものの、ほんの少しだけ活力が戻り息を吹き返したという印象を受けた。同時に何か観念したように諦める表情も。ともあれそんな彼を羨ましいと思いつつも、自身もまたこの上層に居るであろう友人を眺めるように天井を仰ぐ。
そう、グリムロックはまだ罪を犯していない。
彼にはやり直す権利がある。間接的に彼にその機会を与えた人物や、楽しむためだけに他者を害した柩の魔女のように、もう後戻り出来ない罪人ではないのだから。
ならば、せめてと、彼を見守ることにした。
彼がこのゲームから解放されるその時まで、最後の物語を編纂しようと決めたの
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