第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
エピローグU:再会への序章
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漫然と過ごすだけになっていた。強いて言えば、まだ彼には監獄へと突き動かした罪悪感だけが残っていた。罪を償うどころか、罪を認めさえしない自分に彼はどれだけのやるせなさを覚えただろうか。その浅ましさに、弱さに、どれだけ焦燥を募らせただろうか。そうして負の感情を奥底に澱として堆積させた結果として、グリムロックは感情の機微を破綻させてしまった。
それが、どうして、どこで、どのように歯車が狂ってしまったのか。
どんなに自問しても彼には答えなど見出せない。いや、思考の堂々巡りに嵌っていた方がまだ楽だったのだろうか。《答えを求めるため》ではなく《眼前の事象から現実逃避するため》へと、思考という行動の目的を変容させていたのだ。一時の麻酔としての機能ならばいざ知らず、根本からの治療には程遠い。故にこそ、目の前の独房に姿を現した因縁の相手、《柩の魔女》に対してグリムロックは情けない怯えた表情しか向けられなかった。
対するピニオラは、意外にも動じる素振りは見せない。ただ柔らかい笑みを浮かべながらグリムロックを観察するように、どこか不気味なくらい穏やかに、備え付けの固い感触のベッドに腰をおろして佇んでいる。
双方の間には格子を隔てた通路という空間以上に重苦しい沈黙が壁のように横たわる。
ピニオラが衛兵に牢へと通されてから既に四十余分は経過した。その間、グリムロックは叫び出しそうな形相にありながら絶叫を喉の奥で押し殺したかのように押し黙り、ピニオラは持ち前の舌先三寸を披露することなく今に至る。
「もーぅ、そんな熱心に見つめられちゃうと照れちゃいますよぉ」
しかし、端から見れば退屈でどちらかの気まぐれで霧散してしまうような、それでいて重圧を帯びた沈黙は、やはりというべきか、或いは意外にもと評するべきか。呆気なく泡沫のように弾けた。どこか間の抜けたような言葉であるが、水鏡を波立たせる一石としての効力は十分に備えていた。
「………どうして」
「ん〜? 質問ですかぁ? 今なら好きな食べ物からスリーサイズまで何でもお答えしちゃいますよぉ?」
ペースを乱す不協和音じみた軽口を織り交ぜつつのピニオラの言葉を受け、グリムロックは僅かに怯むものの、破られた均衡に任せて喉に淀んだ問いを吐き出す。
「…………在り、得ない………どうしてお前が……お前なんかが此処にいる!?」
「居たら不都合でもありますぅ?」
ピニオラは不思議そうに首を傾げながら、狼狽するグリムロックを見る。
そう。事実としてピニオラがこの場に、更には牢の中にいるという時点で異常な光景ではあるのだ。彼女を知るものであれば、その違和感は際立つし、何よりもグリムロックからすればピニオラは自身を破滅に追い込んだ最たる元凶と認識している。そ
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