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白髪
五話 変化前日 放課後
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ね」

さっと彼女は手を挙げて去って行った。
あの二人はいつだって言い争いをしている。
本気で怒っていることもあるのだが、その内容がいつも少し変わっていて、聞いてる方としては
少し不謹慎だが面白いとも思う。

「おまたせぇ」

今日はよく後ろから呼ばれるな、とぼんやり考えながら振り向く。
間延びした声にもうその声の主はわかっていた。

「遅い」

「ごめんよ」

「なんでこんなに長かったの?」

「学園祭の話してたー」

これが今の恋人だった。
背は高いが、決してがっしりした体格ではない。
中学で部活をやめたため帰宅部のこの恋人とは付き合いだしてもうすぐ一年と半年になる。
話しながら歩き出す。

「はやくない?」

「なんか今年俺のクラス張り切ってるんだよねぇ」

「あと半年もあるのに。随分だな」

「ほんとにな」

いつも会話はふわふわと進む。
親友の彼女と話すのとは大違いだ。
同性との楽しさを異性に求めるような野暮なことはしないが、やはり少し物足りなく感じるときはある。
それを親友に話せば
「あんたがかわいこぶってるだけだよ」という事らしい。

恋人と別れて一人で道を歩いていると、雨が降り出してきた。
傘など持っていない。
幸い家はすぐそこだった。
走って玄関の戸を開けた。

「ただいま」

「おかえり、雨降り始めでよかったねえ」

我が家には父方祖母が一緒に住んでいる。
共働きの両親が、帰宅するのは夜遅くで、いつも迎えてくれるのは祖母だけだ。
少し話して自分の部屋に入った。



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