第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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、走り去っていった。
対して隼も、見つけた止まり木を、『翼』を休めることなく追いかけていった。
『朝明・レグニーツァ領内・ボロスロー平原付近』
夜が終わり、朝が訪れたころになっても、フィグネリアは凱に付きまとう。
「待ちな!ガイ!」
呼び止めてでも、情報を聞き出したいフィグネリアは、声を荒げて凱にかける。
「すまないが、今君にかまっている暇はないんだ。悪く思わないでくれ」
今は……言えない。この反応を見る限り、彼女との確執か、キズナが、どのような形かがわからない。
「そうじゃなくて!このままだと……雨が降るよ!」
「雨?」
気が付いたら、凱の頬にポツポツと水粒があたる感触がした。
やむを得ず、適当な大樹の葉の下で雨宿りをすることにした。
◇◇◇◇◇
「……大気の読み方を、あの子に……エレンに教えてあげたんだ」※8
「大気?」
「本当は、私もヴィッサリオンから教えてもらっていたんだけどね。たしか、『テンキヨホウ』って言ってた」
天気予報――
大気の状態を察知し、『地質』『水質』『風質』の情報を収集し、大気における力学の予測をする科学技術である。
雨。雪。曇。暑。雷。雹。
どこの、いつから、何を、それらを知ることは、何より黄金を得ることより貴重だった。
確か、ヴィッサリオンは傭兵団をつくったと言っていた。そういう頼りがいのある知識を持っていたため、教祖的存在の彼は、傭兵団に全幅の信頼を寄せられていた。
おそらく、戦場でも、生活でも、その英知を振りまいていたのだろうな。集めた『星屑』が、その両腕からこぼれないように――
過去の思い出にふけっていて、フィグネリアはバツの悪そうな顔でつぶやいた。
「……まあ、外れることもあったんだけど」
むしろ、外れることのほうが多かった気がする。
その時のヴィッサリオンの何食わぬ顔が、ゆっくりと脳裏によみがえる。
瞬間、仲間にもみくちゃにされるヴィッサリオンのあの姿。思い出すと、つい笑みがこぼれてしまう。
「仕方がないさ。天気予報はあくまで『過去』の蓄積記録に頼る部分が大きいからな」
むしろ機械文明のない中で、よくそこまでの解析力があったものだと、凱はまだ見たことのない団長へ敬意の息を吐く。
「過去……」
瞬間、フィグネリアの表情が、黒髪のように暗くなるのを感じた。少なくとも、凱にはそう見えていた。
「フィグネリア?」
凱が心配そうな口調で問いただす。
「ねえ、もし「割り切れない過去」が……あったらさ……ガイだったら……どうする?」
「……過去か」
俺だって―
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