第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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またまヴィッサリオンの『面影』を見てしまったから――
おかしな話だ。ガイとヴィッサリオン。容姿も名前も全く違うのに――
フィグネリアの言葉に、凱は沿う形で自分の考えを述べた。
「命は宝珠。たとえどんな悪党の命でも、宝珠であることに変わりはない」※3
「ヴィッサリオンと同じことを言うんだね。あんた」
「ヴィッサリオン?」
まさか……独立交易都市の歴史に名を残したもの。ハンニバル団長と伝説のコンビを組んだあの人か?
「教えてあげるよ。ある傭兵団の団長を務めていてね。『敵』だった傭兵たちを、そうやって殺さずして『仲間』にしていった」
「すごいな。その……ヴィッサリオンという人は」
「誰もが笑って暮らせる国。そんな国を作りたいと言っていた」
――玉響に映り込むすべての人々が笑って暮らせる国――
「誰もが笑って暮らせる国……か」
隣のフィグネリアを見やって、なぜか凱は含み笑いをしていた。
「おかしなことを言ったつもりはないけれど?」
「気に障ったならすまない。誰もが笑って暮らせる国か……そいつは大変だと思ってさ」
「どうして?」
「少なくとも、君は笑いそうにないからな」
フィグネリアは一切の遠慮なく、凱の頭をぶん殴った。
◇◇◇◇◇
凱の頭にタンコブができつつも、話の続きは再会されていた。
「やがて、ヴィッサリオンに『義娘』ができたんだ」
「義娘さん?」
「正確には孤児なんだ。どこかの戦場で拾ったと言っていた」
それから、凱は彼女の話を最後まで聞こうと耳を傾けている。
「今はライトメリッツの戦姫に選ばれて、『銀の流星軍』として『ヴォルン伯爵』という人に雇われている。正確には、竜具アリファールに選ばれて――」
凱の瞳が、かつてないほど見開いた。そして――つぶやいてしまった。
「……エレオノーラ……ヴィルターリア」
「!」
心臓が――飛び跳ねる錯覚。
呼吸が――停止する幻覚。
フィグネリアの慟哭が、空虚となってその場を取り巻く。
「ガイ。あんた――エレンのことを」
「……」
「教えて!エレンのことを知ってるんだろう!?」
矢継ぎ早に凱に彼女らのことを問い詰める。しかし、凱には答えられない。答えていいのかわからない。
「銀の流星軍は!?エレンは!」
知らないとは言わせない。
やっとつかんだ手掛かりなんだ。
「二人は……『生きているのか』?」
生きている。それは間違いない。ただ、無事であるかは別なのだ。
踵を返し、凱は何も言わず
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