第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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度を上げる。対して夜盗も追跡速度を上げる。なるべく相手の集団を崩さないよう、適切な速度を保ちつつ―――
「いまだ!反転!」
唐突に声を上げる凱の指示に、フィグネリアは僅かながらも慌てる。しかし、その刃は全く乱れがない。
横一文字に薙ぎ払う獅子の牙と隼の翼。力学が真逆に働く現象に、夜盗の連中があらがえるはずもなかった。
一気に夜盗全員は、団子状態で転ばされた。凱の作戦に連中はまんまと引っかかった。
「驚いたよ。あんな戦法があったなんてね」
「速度差以外に、距離差を図り間違えることができれば、今みたいにレンガを崩すようなこともできるんだ」
これって、どこか聞いたことがあると、フィグネリアは思い出す。
「知っている。そいつは『カンセイ』という力学が働いたからだろう?」※13
フィグネリアの言葉に、凱の顔は軽くこくりとうなずく。正解だ。
これは、かつてアルサスに攻め込んだテナルディエ軍を、凱一人が食い止めていた時、騎兵を落馬させたのと同じ手だ。
距離を測り間違えた騎兵たちが、まるで九柱戯のように削転倒していったのを思い出す。
集団突撃をとってしまえば、あとは慣性行軍しかできない。数の多さを逆手に取って『横倒し』にすることは容易だった。
――突貫力に優れるブリューヌの騎士たちに、こんなことしたらきっと怒られるだろうな。※6
奇しくも、『赤髭』と同じ考えを持っていたとは、凱は決して知ることはなかった。
ある堺を切り目にして、半分の100人と見切ればいい。少ない労力で最大の戦果を出したのだ。
もう一つ、その戦果に対して、凱への疑念もあった。
「それにしても、あんた『人を殺す』つもりがないの?」
てっきり、「殺すな」とか言われるかと思ったのに――
見ればわかる。人を殺したことのないやつが、あんなに強いはずがない。
それに、ただのきれいごとなら、「人を殺すのをやめろ」くらいは言ってくるはずだ。なのにこの男ときたら――
凱とて、自分の考えを強要する気はない。
――生きる資格。それは、もがき、足掻くことで、勝ち取るものだあぁ!――。※7
かつて、三重連太陽系の決戦にて、白き創造神に向けた自分の言葉。
もがき、足掻くことこそ、生命体は『本当の勇気』をつかみ取ることができる。
勇気の根源が生命であるように、生命の起源もまた勇気なのだから――
「……さあ、どうしてだろうな。そういう君だって俺と同じじゃないか?」
なんとなくごまかした。
エヴォリュダーの力を容易に人へ向けて放とうと思ったことは、凱にはたった一度もない。※12
自分のことを棚に上げて、無理に話題を彼女に振った。
気を失った夜盗の連中を一瞥加えて、フィーネは説明した。
『戦利品』たる夜
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