第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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覚めが悪い」
彼女にとって、それは傭兵としての矜持。無抵抗の人間に手をかけるなどもってのほかだ。
過剰な殺傷は禍根を生む。そこからは、何も生まれない。
「すまない。知らなかったんだ」
「そいつはそうだろうね――その詫びとして」
それにしても――
殺さずに倒してしまったんかい?と思いつつ、さて……どうしたものかな?
と考えていると、彼女の腹の虫が遠慮なく鳴いた。
「まずは何か食わせてくれない?」
焼いたままの魚を思い出して、凱は遠慮がち?に案する。
「……焼き魚でよければ」
「承認」
こうもあっさり決めてしまい、二人は河原へ移動して魚を頬張り始めた。
◇◇◇◇◇
「いい焼き具合だな。これ、改めて……詫びの印として」
焼き具合を見て、凱は焚火の中から、串にさしていた魚を一匹差し出した。。
食欲を刺激する塩加減。大した味付けもしていないにかかわらず、柔らかい魚肉の歯ごたえが、今まで自分が空腹だったと改めて知らしめる。
「まあいいさ。こんなに暖かい晩飯を食べるのは久しぶりだったからね」
アルサス在住のころ、ティッタの手伝いで取得した料理スキル。ティグルのサバイバル知識も若干混ざっているが――
自分が食べるもんだから、大した味付けも考えていなかったので、食べさせるにはどこか躊躇いさえ感じていた。二人に感謝したい気持ちだった。
「自己紹介が遅れたな。俺は獅子王凱。姓がシシオウ。名はガイだ。ただの流れ人だけどね」
「よろしく。私はフィグネリア……なかなかうまいな。これ」
先姓と後名の羅列……ヤーファの人間なのかと、フィグネリアは察した。
食欲を満たすことを優先して、凱に一瞥すらせず挨拶を交わす。
うまそうに魚へかぶりつくあたり、少なくとも食すぶんには問題なさそうだ。凱はほっと胸をなでおろす。
(フィグネリア……どことなくルネと雰囲気が似てるな)
ルネ=カーディフ=獅子王。凱の従妹にあたる彼女は、獅子の女王のコードネームを持つ。
余剰熱排出機関に欠陥を持つサイボーグの彼女は、いつも『焔』の揺らめく通り、苛立ちをまき散らしていた。
そのような気質が、風が両者に似ている。
獅子の女王の気質を知るものならば、そこへ『いつものように』を付け加えるだろう。いや、その気質はすでに過去の『焔』となっていた。
追い付いて先頭を踏み取るところは、エレンと似ているのかも――
『仲間』への回想もそこそこにして、凱はさっそく尋ねた。
「ところで、君はこのあたりの住んでいるのか?たしか夜盗をとっちめる仕事とか言っていたけど――」
「いいや、私は傭兵……とは言っても、飯を食い繋ぐ程度で稼いでいただけ。適当に路銀がたまったら
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