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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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ようとしている。という意味。

「……ありがとう……ガイ。助けてくれて」

違う。これは礼を言われるべきではない。むしろ――

「フィグネリア。むしろ俺は君に謝んなくちゃいけない……すまなかった」
「謝らないで。私もどうかしていた。それに……」

フィグネリアは凱から視線をそらした。

「私のことは『フィーネ』でいい」
「……フィーネ……それが君の」
「呼びにくいだろうから、そう許すから、さっきのことは、許してくれると嬉しい」
「さっきのこと?ああ、あのことか」

いろいと思い当たる節があるが、最初から自分に非がある為、「お互いにね」と凱は答えた。

「フィーネ。いつかきっと君もエレン達と会える日が来るさ」

『二人』の確執をあずかり知らぬ凱のセリフ。だが、フィーネには意味深く聞こえていた。
できることなら、顔を合わせたくない相手なのだから――
長髪の男と、長髪の女は流星を眺めながら、空を覗いた。

「いつか……一緒に?」「ああ」

フィーネは、改めて凱に礼を述べる。

「ありがとう。ガイ。気を遣ってくれて」

それは、落ち着いた女性特有の『柔和』な――フィーネの微笑みがそこにあった。

――あれ?

――この人は……『こんな暖かい表情』ができるんだ。
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彼女の笑顔は、凱の心臓を支配する。
前言撤回。「君は笑いそうにない」は、心のメモ帳から取り消す。消しゴムのごときで。
蚊の鳴くような声で、凱は敗北を宣言する。

「――敵わねえや。ちくしょう」
「どうしたの?ガイ」
「……いや、何でもない」
「変なヤツだな。あんたは」
「……違いない」
「さあ、急ごう!早くあんたの『目的地』とやらに辿り着いて『目的』を果たさないと」
「ちぇっ。勝手だなあ」

二人が歩み始めた旅路。目的地の『丘』はまだまだ遠い。

目指すは――バーバ=ヤガーの神殿―――
アリファールの風に導かれて。勇者と華姫はそこへ向かう。
足取りは、風のように軽かった。








『満月・翌日・ルヴーシュ・バーバ=ヤガーの神殿内部』








そこは、立派な造りの石柱建造物だった。
2日かけてやっと、アリファールの導く先へたどり着くことができた。

――待機中の『銀の流星軍』再始動まであと2日――

先ほどまでの崖とは違う虚無の空間。言いようのない不気味さが、青年と傭兵の心理を黒く駆り立てる。

「ガイ、一つ聞いていい?」
「なんだフィーネ」

さらに最深部――階段を降りて地下へもぐる。
カツン――カツン――カツン――
無常に響く足音だけが、唯一の認識手段。自分が今どこにいて、何をしているかを教えてくれる。
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