第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
[15/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ようとしている。という意味。
「……ありがとう……ガイ。助けてくれて」
違う。これは礼を言われるべきではない。むしろ――
「フィグネリア。むしろ俺は君に謝んなくちゃいけない……すまなかった」
「謝らないで。私もどうかしていた。それに……」
フィグネリアは凱から視線をそらした。
「私のことは『フィーネ』でいい」
「……フィーネ……それが君の」
「呼びにくいだろうから、そう許すから、さっきのことは、許してくれると嬉しい」
「さっきのこと?ああ、あのことか」
いろいと思い当たる節があるが、最初から自分に非がある為、「お互いにね」と凱は答えた。
「フィーネ。いつかきっと君もエレン達と会える日が来るさ」
『二人』の確執をあずかり知らぬ凱のセリフ。だが、フィーネには意味深く聞こえていた。
できることなら、顔を合わせたくない相手なのだから――
長髪の男と、長髪の女は流星を眺めながら、空を覗いた。
「いつか……一緒に?」「ああ」
フィーネは、改めて凱に礼を述べる。
「ありがとう。ガイ。気を遣ってくれて」
それは、落ち着いた女性特有の『柔和』な――フィーネの微笑みがそこにあった。
――あれ?
――この人は……『こんな暖かい表情』ができるんだ。
<i6817|39077>
彼女の笑顔は、凱の心臓を支配する。
前言撤回。「君は笑いそうにない」は、心のメモ帳から取り消す。消しゴムのごときで。
蚊の鳴くような声で、凱は敗北を宣言する。
「――敵わねえや。ちくしょう」
「どうしたの?ガイ」
「……いや、何でもない」
「変なヤツだな。あんたは」
「……違いない」
「さあ、急ごう!早くあんたの『目的地』とやらに辿り着いて『目的』を果たさないと」
「ちぇっ。勝手だなあ」
二人が歩み始めた旅路。目的地の『丘』はまだまだ遠い。
目指すは――バーバ=ヤガーの神殿―――
アリファールの風に導かれて。勇者と華姫はそこへ向かう。
足取りは、風のように軽かった。
『満月・翌日・ルヴーシュ・バーバ=ヤガーの神殿内部』
そこは、立派な造りの石柱建造物だった。
2日かけてやっと、アリファールの導く先へたどり着くことができた。
――待機中の『銀の流星軍』再始動まであと2日――
先ほどまでの崖とは違う虚無の空間。言いようのない不気味さが、青年と傭兵の心理を黒く駆り立てる。
「ガイ、一つ聞いていい?」
「なんだフィーネ」
さらに最深部――階段を降りて地下へもぐる。
カツン――カツン――カツン――
無常に響く足音だけが、唯一の認識手段。自分が今どこにいて、何をしているかを教えてくれる。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ