第16話『乱刃の華姫〜届かぬ流星への想い』
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―帰りたい過去がある。
生まれた理由と生きる意味を与えてくれた、あの時代に――
代理契約戦争に置いて行ってしまった――
数多の小さな生命を、取り戻せるなら戻りたい――
守れなかった―
『人を超越した力』の意味に目が曇ってしまい――
俺が殺したようなものだ――
そんな俺に、彼女の質問に答えることができるだろうか?
「ねえ……ガイ?聞いてる?」
フィグネリアの問いに答えることなく、凱の視線は空を向いていた。
土砂降りだった雨が、綺麗な青空に遠慮してやんでいく。
「雨が止んだな。いくか」
「待ちなよ!ガイ!」
またも、凱はフィグネリアを巻こうとして、さっそうと走り始めた。
後ろめたい『獅子』がしっぽを巻いて逃げるさまを、『隼』の瞳が見逃すはずなどなかった。
◇◇◇◇◇
それでも、隼はしつこく追っかけてきた。
(フィグネリア……かなり速いな)
例えるなら、そう――まるで『隼』のように――
草木をかわしつつ走行する凱に比べ、草木を踏み倒しながら走る
(『俺』がエレオノーラの手がかりになっている以上、どこまでお追いかけてくる)
まずい……銀の逆星軍がいつ襲ってくるかわからないこの旅に、これ以上関わると、彼女の身が危ない。
(やはり、『│銀の流星軍≪シルヴミーティオ≫』の結末を話すべきか――)
しばらく逃避行を続けると、目の前に『ガケ』の存在を見つけた。あたかも助け舟を差し出したかのように。
それは、凱にとっての『助け舟』であり――
フィグネリアにとっての『難破船』であった――
崖という名の『海峡』を、二人はどうわたりぬけるだろうか?
◇◇◇◇◇
(なんて速さなんだ!?この私が……見失わないのが精いっぱいだなんて!)
疾風と駆け抜ける脚力には自信がある。この戦装束の刺繍衣装『隼―ハヤブサ』のように。
でも、ガイとかいう男の脚力は、フィグネリアのそれを遥かに上回る。いや、人を超越しているとしか思えない。
生身の肉体にサイボーグの能力が一体化した生機融合超越体の走力。
フィグネリアの目測――もしかしたらあの男……『馬』よりも早く、『獅子』に匹敵するのではないかと――※9
途中、はやる気持ちが先走った報いなのか、足元につまづいて転んでしまう。
(しまった!?あいつを見失った!)
擦りむいた膝小僧を無視して、フィグネリアはすぐさま立ち上がる。束の間、凱の姿はどこにもなかった。
(いや……見つけた!)
そう、凱の姿はそこにあった。
あの長髪の男の姿を、この目をそらせば、もう二度と――たどり着けない気がして。
彼女は必死に足を運ばせ
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