ターン72 冥府の姫と変幻忍者
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あまりといえばあまりの言葉に入学以来どこぞの先輩のせいで無駄に鍛えられたツッコミとしての本能がつい彼女に口を滑らせてしまう。
「何先輩みたいなこと言って……あ」
「先輩?ああそうそう、清明君。そういえばあの子どこ行ったの?また来たらお茶しようねって約束してたからずっと探してたんだけど……あれ?」
地雷を踏んだ。そのことに気づいたのは、ほぼ姉妹同時だった。清明の名が出た瞬間、さっきまで辛うじて普通に受け答えしていた夢想の目から生気が消えたのだ。うかつだった、一見元気そうでもかなりまいってるのはわかっていたはずなのに、と自責する葵となんだかわからないが清明の話題はまずかったらしい、と察した明菜が、咄嗟のアイコンタクトを交わして慌てて話題を変える。
「あ、えーっと、そういえば葵ちゃん、最近お勉強は頑張ってるの?お姉ちゃん気になるなー!」
「ええ、そうですね!もっとも、ここ最近は休みですが!」
「へぇー、お休みなんだ!いいなぁー、お姉ちゃんもお休み貰って一日中葵ちゃんの顔眺めてたいのになー!」
「いえ、そんなにいいものでもないですけど……いえ姉上、この話はやめましょう」
すんでのところでこのままこの話題を続けていては話を変えた意味がなくなることに気づいた葵が、寸前でストップをかける。少なくとも、これ以上夢想の目のハイライトが消えていくのはかろうじて食い止められた。
そこで困ったのが明菜である。昨日島に来たばかりの部外者である彼女にはまだ事態の全貌が掴めておらず、そのため一体どんな話題なら問題ないのかがよくわかっていない。そこで何か話題の種になるものでもないかと左右に素早く目を走らせ、たまたま目に付いたものは葵……ではなく、その腕に付いたデュエルディスクだった。
「そうだ、河風ちゃん。お姉ちゃん、河風ちゃんがデュエルするところ見てみたいな」
「デュエル、ですか?」
たとえどん底の気分でも、その一言には反応するのがデュエリストの性。わずかにハイライトを取り戻した夢想に、満面の笑みで頷いてみせる。
「うんうん。ほら葵ちゃんも、準備して」
「あ、私がやるんですか?姉上、前回はデッキにデュエルディスクまで用意して、ルール覚えてから来てたじゃないですか」
「言ったでしょう、ここに来るのに苦労したって?私1人で警戒網抜けてくるだけでもすっごい苦労したんだから、あんな大きな機械持ってくる余裕なかったんだもん」
頬を膨らませて拗ねる姿はとてもこの中で最年長の女性がやっていい仕草と呼べるようなものではなかったが、少なくとも似合ってはいたことは間違いない。もし、私がこんなことをしたら?姉の様子を見た葵の脳裏にそんな考えがチラリと頭をかすめたが、そんな考えはすぐに追いやられた。いや、よそう。葵・クラディーは気がふれた
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