ターン72 冥府の姫と変幻忍者
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ちゃん葵ちゃん、あれって葵ちゃんの手料理!?あれ私食べていいの!?」
「……いらないなら下げますよ」
「いやったあ!ありがとうマイラブマイシスター!いっただっきまーす!」
意外にも、と言うべきか、さすが葵の姉、と言うべきか。あれだけ大騒ぎしていた人間と同一人物とは思えないほどきちんと椅子に座り、手を合わせてから箸を取った明菜が真っ先に手を伸ばしたのは、いまだ湯気を立てている味噌汁の器。そんなところも姉妹なんだなあ、と見ていると、再び自分の朝食に手を付けながら葵が姉に話を向けた。
「それで、姉上。一体今度は何しに来たんです?というか、今かなりがっちり遮断されてるのによく入って来れましたね」
「ああ、そのことね。そうなんだよ葵ちゃん、お姉ちゃんもうすっごい苦労したんだから。ここ最近急に電話しても繋がらなくなっちゃったから、もしかしてまた反抗期にでもなったったのかなって思ってさ。なら今会いに行ったらまた葵ちゃんが反抗期の時の可愛い可愛いすね顔が拝めるかもって思うと、もうお姉ちゃんいてもたってもいられなくって」
その発言に、何も言わずに形のいい眉をひそめる葵。話以上に凄いお姉さんだね、という夢想の視線をどうとらえたのか、補足するようにポツリと呟いた。
「姉上は中身こそこんなのですが、あらゆることに対してとんでもなく有能な化け物なんですよ。その姉上がここまで言うのなら、常人には突破は不可能ですね。海馬コーポレーションが何を考えているかはわかりませんが、本気でこの島と外を隔絶したがっているのは確かなようです。でも人間が消えた以上いつまでも隠し切れるものでもないでしょうし、この先どうするつもりなんでしょうね」
「待ってるんじゃないかな、だってさ。きっと……きっと、またいつもみたいに厄介ごとを全部片づけて帰ってくるから。それまで時間稼ぎしてるんだよ、って」
きっと帰ってくる。むしろ自分に言い聞かせるようにそう言うと、思ったよりもずっと大きな声が出た。その突然の感情の高ぶりには正面の葵が目を丸くし、少し離れた席の明菜も箸を止めて夢想に目を向けたが、一番驚いていたのは当の本人だった。
そんな様子を見て何事か思案したのち、明菜がふと箸を置いた。ごちそうさまでした葵ちゃん、と手を合わせ、いつになく真剣そうに青い……ではなく正面の夢想ににじり寄る。
「ねえねえ河風ちゃん、なんでそんなに元気ないの?お姉ちゃんが可愛い妹の友達のよしみで相談乗ってあげようか?」
「え?いえ、私は大丈夫です、って」
「そうかな?なんだか今にも心が折れちゃいそうに見えるけど……もしかしてお腹痛い?」
一応そこまでは真面目な顔で聞き耳を立てていた葵も、最後の一言にはガクッとつんのめった。曲がりなりにも自分からシリアスに持ち込んでおいてからの、その
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