暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン72 冥府の姫と変幻忍者
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る。そして、その読みは当たったらしい。
 育ちがいい彼女には珍しく、うんざりした顔で浅漬けを箸で指しながら語りだした。

「今朝起きたらタッパーに入ったこれが、姉上直筆の便箋たっぷり6枚分の私宛てラブレターと一緒に私の部屋の冷蔵庫に入ってました。私寝る前鍵かけたはずなんですけどね、どこから入ってきたんでしょうね。だからたぶん、今もこの辺のどこかにいますよ姉上。わざわざこの島まで来て、手紙だけ置いて帰るなんてあの人がするはずありませんから」

 諦め顔で淡々と語る葵に、まさかそんなことはあるはずないだろうと言おうとする夢想。
 なにしろ今は生徒が異世界に行ったっきりという異常事態の真っただ中、海馬コーポレーションの全技術を尽くしてこの島は完全に外の世界から隔離されている。食料はこれまでの業者との取引を一時的にストップして海馬コーポレーションが自社ヘリですべてを取り仕切り、手紙を送る連絡船は完全に停止させられた……そんな甘いものではない。インターネットからも完全に遮断され一切の情報の送信が不可能になり、妨害電波のせいで島の外には電話1本繋がらない。こんな状況で、いかに生徒の家族といえど第三者がこの島にやってこれるはずがない。だが、そんな彼女の口から言葉が出ることはついになかった。いきなり天井の一角、排気口が内側から取り外されたかと思うとそこから人間の頭が飛び出したのだ。

「おー、葵ちゃんがお姉ちゃんのことそこまでわかってくれてたなんて!ゆうべは可愛い寝顔も見れたし、もうお姉ちゃんこれだけで葵ちゃん成分補給できて10年は戦えるよ!」
「…………ほら、わかりますか河風先輩。今この人天井裏から出てきましたよね。こういう人なんですよ」
「え、えっと……初めまして、ですって、さ……?」
「はーい、はじめまーしてっ!私の葵ちゃんがいつもお世話になってるね、明菜・クラディーですっ!」

 入学以来初めて見せるほどひきつった笑顔で、突然天井裏から物音ひとつ立てずに降りてきた金髪の女性……明菜の方を見ようともしない葵に、さすがの夢想もただ挨拶をする程度しかできなかった。だが明菜の方はそんなことにもお構いなしに夢想の方を向いて明るい笑顔を見せ、その手を握ってぶんぶんと上下に振る。その表情や髪の色、全体の雰囲気こそ全く違うものの、こうして並んでいると明菜と葵は顔のパーツひとつひとつはどれもよく似ており、さすが姉妹という印象を抱かせる。

「……姉上、その辺でやめてあげてください。河風先輩が困っちゃってるじゃないですか」
「えー?」

 そう言いながらもしぶしぶ手を放し、一歩下がったところでようやく放置されたままの3つ目のお盆の存在に気が付いたらしい。またもやパッと表情を明るくすると、反射的に1歩下がった妹に喜色満面でずいっと詰め寄る。

「葵
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