暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン72 冥府の姫と変幻忍者
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えない。
 敗北の二文字が重くのしかかる中、銀河眼のブレスが部屋を白く染めた。

「バトル。銀河眼の光子竜でダイレクトアタック、破滅のフォトン・ストリーム……ってさ」

 銀河眼の光子竜 攻3500→葵(直接攻撃)
 葵 LP700→0





「また負けましたか……本当、なんなんですか河風先輩……」
「でも葵ちゃんカッコ良かったよ!お姉ちゃんもう感動しちゃった!」
「あーはいはい。絶対いけたと思ったんですけどね」

 悔しそうに笑う葵に、夢想も屈託のない笑顔を返す。

「葵ちゃん、また腕が上がってたね、ってさ。前よりもさらに強くなってたよ、だって」
「それで勝てなかったら世話ないんですけどね」

 和やかに語り合う2人の横で、明菜がうーんと背伸びした。自然と強調される胸のふくらみに対しなぜ姉妹なのにスペックだけではなくこんなところにまで格差がつけられなくてはならないのかとじっとりとした視線を送る葵のことを知ってか知らずか、明菜が明るく話しかける。

「じゃあ、お姉ちゃんはそろそろ帰るからね。楽しかったよ、葵ちゃん」
「あ、そうなんですか。わかりました姉上、では」
「少しは引きとめてよ!大事な大事なお姉ちゃんなんだよ!?」

 ぶーぶー言いながらも手早く荷物をまとめ、入ってきたのと同じ天井裏から出ていこうとする明菜。だがその瞬間、突然アカデミアが揺れた。それは文字通り、ほんの一揺れ……何かがこの島に降り立ったような、ごく小さく短いものだった。

「地震?あれ、止まりましたね」
「んー……多分だけど、外が怪しいかな。お姉ちゃんは誰かに見つかるわけにはいかないからこの隙に島を出るけど、葵ちゃんと河風ちゃん、見に行ってみたら?じゃあね、また来るねっ!」

 その言葉を最後に今度こそ天井に身を滑らせ、忍者らしく一切の痕跡も残さずに消えていった明菜。残された2人は思わず顔を見合わせ、ややあって同時に外に出た。なぜだか知らないが、ある予感がしたのだ。こんな非常識なことをやっても不思議がない人間など、彼女たちの知る限りあの明菜と……それと、もう1人しかいない。
 外に出て走ると、すでに人だかりができていた。さらに近づくと、その興奮したざわめきが聞こえてくる。その何かを取り囲んでいる生徒たちを強引に押しのけて円の内側にたどり着いた瞬間、夢想の目に数週間ぶりの明るい光が宿った。何かを言おうとして言葉に詰まり、あふれる涙のせいで視界がにじんで何もかもがぼやけて見える。それでもどうにか息を吸い、やっとの思いでただ一言だけ絞り出した。

「……お帰り、清明!」
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