巻ノ九十 風魔小太郎その二
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「拙者と御主でな」
「その箱根にですな」
「行くとしよう」
こう言うのだった。
「これよりな」
「早速ですな」
「箱根におられることがわかった」
幸村は由利の問いにこう返した。
「ならばわかるであろう」
「はい、それならば」
「ここを発つ」
「九度山を」
「そうして箱根まで行こうぞ」
「そして風魔殿にお会いして」
「御主を鍛えてもらう」
こう由利に告げた。
「それからはわかるな」
「その備えた力で、ですな」
「時が来れば戦ってもらうぞ」
「さすれば」
由利も確かな声で答えた。
「その様に」
「箱根までは距離があるが」
「それでもですな」
「真田の忍道を行けばすぐじゃ」
「そうですな、箱根までも」
「では行くとしよう」
こう言ってだった、幸村は由利を連れてすぐに九度山を発った。箱根までは確かに遠いが真田の忍道を通ればだった。
瞬く間に九度山から遠く離れていた、由利は尾張に入った時に九度山の方を振り返りそのうえで幸村にこんなことを言った。
「流された場所ですが」
「しかし今ではな」
「我等の家ですから」
「感慨があるのう」
「不思議なことです」
「住んでいれば次第にな」
それだけで、というのだ。
「愛着が出て来るということじゃな」
「あの様な場所でも」
「そうじゃ」
幸村も九度山の方を振り向いていた、二人は深い山の中にいるがそれでも九度山がどちらにあるかはわかっているのだ。
それでだ、二人は山の方を見て言ったのだ。
「どうにもな」
「愛着を感じますな」
「全くじゃ、しかしな」
「今はですな」
「箱根に行く」
「そしてそのうえで」
「風魔殿にお会いする、しかしな」
それでもというのだった。
「問題は風魔殿がよしと言ってくれるか」
「そのことですな」
「しかし何度でもな」
「お願いしてですか」
「頼み込み」
そうしてというのだ。
「何としてもな」
「それがしにですか」
「術を授けて頂く」
「そうして頂けるのですか」
「御主にも強くなってもらわねばな」
「時が来れば」
「働いてもらわねばならぬ」
だからこそというのだ。
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