第四幕その六
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それを飲んでです、太田さんは笑顔で言いました。
「美味しいです」
「そうなんだね」
「はい、これを一杯飲みますと」
ウィンナーコーヒー、それをというのです。
「ぱっと目が覚めます」
「そうなるんだね」
「それで元気が出ます」
「コーヒーの中にはカフェインが入っているからね」
「そのせいで、ですね」
「目が覚めて元気が出るんだよ」
「覚醒作用だよ」
先生は紅茶を飲みつつ太田さんにお話しました。
「お茶もそうなんだよね」
「カフェインが入っているから」
「そう、僕もお茶を飲んでね」
「目を覚ましてるんですね」
「そうした意味でもよく飲んでるよ」
お茶をというのです。
「そうしているんだ」
「そうですか」
「味も好きだけれどね」
「そうした意味でも好きなんですね」
「そうだよ」
「僕もです、コーヒーを飲んで」
そしてというのでした。
「また描きます」
「絵をだね」
「そうします」
「今日もそうするんだね」
「はい、確かにスランプですが」
それでもと言う太田さんでした。
「僕は描きます」
「これまで通りだね」
「スランプだからこそですかね」
「描くんだね」
「そうした気持ちもあります」
「太田君は前向きだね」
先生は太田さんのその気質を知って言うのでした。
「その前向きさは素晴らしいよ」
「そうですか」
「うん、スランプだとね」
先生はよく言われることを思い出してこうも言いました。
「塞ぎ込んで何もしたくないっていう人もいるらしいから」
「はい、よくあるお話ですね」
「けれど君は違うんだね」
「確かに苦しいですし描きたくないって思ったりもします」
太田さんは自分の気持ちを正直にお話しました。
「ですが」
「それでもだね」
「はい、そうした時にこそです」
「描く様にだね」
「そうしています」
「その前向きさがね」
先生は太田さんにまた言いました。
「いいんだよ」
「そうですか」
「そう、それだけでもかなり違うよ」
本当にというのです。
「僕はそう思うよ」
「あがけるだけあがけ」
太田さんはこうも言いました。
「中学の時先生にそう言われました」
「スランプの時はだね」
「はい、美術部の先生に」
「それで描いてるんだね」
「そうしています」
「こうした時こそ」
「そうです、けれど」
太田さんはコーヒーカップを片手にしていますが今は飲んでいません、自分のことをお話することに集中していてです。
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