第44話 脱走
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こか探せばいつか見つかる、絶対に見つかると思い込んでいたからこそ、どうしようもない不安が俺らの間を風となって吹き抜ける。
全部屋くまなく探し終え、落ち着かせるためにリビングに集まって紅茶を飲んでいた。
会話も続かず、ただ紅茶を啜る音だけが物静かに響き渡る。
「どこ、行っちゃったんだろうね。三人とも」
静寂に終止符を打ったのは凛。
ぽつりと誰もが思っていることを呟いた。
「多分、不審者とか……そういうのはいないんだろうな」
と思い込んで別の案を考えてみる。
考えてみようと頭を働かせるも、想像ができない。彼女たちが無断で誰にも言わずにいなくなること自体が考えられないから。
……でも。
もしかしたら……?
瞬間。
ぞわり、と背筋が凍りつく感覚を感じる。
”信頼している子が無断で誰にも言わずに自分の前から急にいなくなる”ことなんて前にもあった気がした。
気がしただけ。だけど、その感覚はあまりにもリアルで鮮明で何か忘れている事があったような気がした。
「(前にもこんなことがあった……?)」
無意識にそんなことを考えてしまい、ふらりと、足元がもたついてしまう。
「大くん!」
異変にすぐ気がついた穂乃果に支えられる。
穂乃果がまるで別人のように見えて、俺は思わず彼女に掠れたこう言ってしまった。
「君は……誰?」
「え……?」
俺の声は穂乃果にしか聞こえなかったのだろう。
驚いて青ざめた表情が見て取れる。
「大丈夫大地?熱あるの?」
絵里の心配げな声に俺は『大丈夫』と無理矢理言って穂乃果の腕から離れる。
今考えるべきことはそっちじゃない。
「ごめん、気にしなくていい。それよりも、一度、外も見てみようか」
もしかするといつの間にか外に出たのかもしれない。
考えられるだけの策はとりあえず全部つぶしていく。正直これで何も得られなかったら完全にお手上げだ。
────と、思っていた時期が俺にもありました。
「......茶番かよ。最初から最後まで」
外は室内と違って、空気が澄んでいた。
自然の香りと遠くにある川のせせらぎ、鳥や虫の鳴き声がなんとなく田舎を連想させる。
別荘周辺を散策しようと、出て左からぐるりと一周し始めた時だった。
曲がってすぐ目の前にある数本の木々。
どうということの無い、どこにでもある
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