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黒きローブの勇者
昔の思い出
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ゲに羽が生えたような見た目で、人の10倍ほどの大きさである。

「おわっ!」

「ちょっと、気をつけてよ落っこちちゃうじない」

「ご、ごめん、初めて乗ったからちょっと驚いただけだ」

俺たちがリザードドラゴンにまたがると、レンタル屋のおっちゃんが、リザードドラゴンの綱を引き、小屋の外へと誘導した。

「それでは落っこちないようお気をつけ下さい」

その言葉を合図としてリザードドラゴンが地を思いっきり蹴って、羽を広げた。

バサッバサッ

大きな羽音を立ててリザードドラゴンが飛び立つ。

「うおお!これは凄いな!」

ものの数分で俺たちがいた町は遠く見えなくなった。
リザードドラゴンの背中には俺と、シエスタと、リザードドラゴンを操縦する男の人が乗っていた。

「なあ、シエスタ」

「何?」

「実はな、俺も妹を亡くしたんだ」

「そうだったんだ......」

「昔のことだ、気にしないでくれ。でも、家族を亡くす痛みは俺もわかっているつもりだ、だから元気出せ」

そう、俺は去年、妹を亡くしている。
妹は学校の帰り道、通り魔に襲われて死んだ。
いつも一緒に帰っていたのに、その日だけは友達のとの約束で妹とは帰らなかった。
あの時一緒に帰っいればこんなことにはならなかった。
あの日、一緒に連れてくればこんなことには。
そんな事も、妹が死んでしまった今になってはどうしようもない事だ。
俺はその通り魔を恨んだ。
殺してやりたいと思った。
しかも、その通り魔は中学生で1年ほど少年位に入っただけで、いつものように過ごしている。
なんなんだこの理不尽な世界は。
両親ともに、妹が死んだショックはとても大きく、仕事に熱中するようになった。
あいつさえいなければ、あの中学生さえいなければ。
そしてある日、俺は妹の机の中からある手紙を見つけた。

『お兄ちゃん誕生日おめでとう』

手紙にはそう書かれていて、間に四つ葉のクローバーのしおりが挟み込まれていた。
その日から俺は、誰も信用しないようにするようになった。
周りは敵、それだけを思って過ごした。
その思いは今も変わらない、いや、変えない。
人なんて、信用なんかできない。
俺が信用するのは家族と、そして、今はない妹だけだ。

「うん、君もね」

それから俺たちは王都ヴァルカンに着くまで一言も話さなかった。

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