沙都子IFルート
[1/4]
前書き [1]次 最後
「圭一さん!」
沙都子の叫びにも似た呼び掛けで、膠着した空間は容易く切り裂かれた。
イリー(入江所長)、クラウド(大石刑事)、トミー(富竹)、そしてK(圭一)で結成されたソウルブラザーズが力を合わせ、モテモテパンツの守備は完全無欠のプールサイド要塞と化した今、成す術はとうに失われたはず──そう確信していた圭一にとって沙都子の呼び掛けは、まったくの予想外だった。
沙都子は、驚きを殺し平常心を装う圭一に無防備に近付いて行く。
「な、なんだ沙都子ちゃん。 もうそっちは万策尽きた筈だぜ。 そうやって考え無しに近付くのは沙都子ちゃんらしく……っ!」
尚もうつむき無言で距離を詰める沙都子に不気味さを覚えたのか、自分でも気付かず早口で捲し立てる。
が、それが聞こえていないかのように更に近付き、遂に目と鼻の先まで来た沙都子に言葉を遮られる。
ごくり、そう音が響くほど唾を飲み込む。頬に一筋の汗が滴るのを感じたと同時に、沙都子が口を開く。
「──す」
「す?」
「好きなんですわ!! 圭一さんの事が!!」
──
────
──────へ?
「い、今……なんて」
理解が追い付かない。意識が遠のく気がする。天と地がひっくり返ったような、もはやちゃんと立ててるのかさえわからなくなってきた。
周囲も同様にクエスチョンマークとエクスクラメーションマークを浮かべているなか、沙都子は困惑を極めた圭一さえお構い無しに、堰を切ったようにドンドン告げていく。
「好き……どうしようもなく、たまらなく好きなんですわ……圭一さんの仕草からその優しい声や笑顔も全て」
「────」
「だから、嫌。 だって圭一さんがモテモテになってしまえば、私が割り入る隙なんてありやしないでしょう? ──そんなの絶対に嫌ですわ」
「────」
「好きな人を独り占めしたいと思うのは当然だとは思いませんこと? ──ずっと、ずっと私の、沙都子のにぃにでいて欲しいんですのよ」
驚きが重なると人はなにも考えられなくなるのか、等と関係ない事が頭に浮かぶ。
──現実逃避もいい加減にしろ、そう心の中でふざけていたはずが、漏れでた声があまりに息詰まっていて更に驚きを重ねる。
「沙都、子──っ」
その息苦しい声を聞いた沙都子は、優しく圭一へ寄りかかり、上目遣いで受け答えをするように名前を呼ぶ。
「──圭一……」
少しばかり涙ぐんだように見えたその表情は、図らずとも独り占めしたいと考えてしまった圭一を誰が責められよう。
応えなければ。
「ぬ、脱いだ!」
思わず声を荒げたのはレナだった。
声を放った後、つい叫んでしまったと申し訳なさそうにしているが、しょうがないだろう。なに
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ