第17話<自由と憎しみ>
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い期待を見事に裏切ってくれるものだった。
「憎む……のか?」
思わず復唱した。
敵はグロテスクで原始的な風貌をしている者が多いから正直もっと単純な動機かと思っていたのだが……意外と難しい意義付けで対峙してくるんだな。
しかし何だろうか? 最初に出会って会話を交わした際にはとても聞き辛かった彼女の語り口も少しずつ滑らかになっている。敵も学習をして日本語が上達するのだろう。
深海棲艦とは想像以上に知的だ。もし今後、武力だけでなく作戦面でも押され始めたら我々はどうなるだろうか?
そう考えた私は僅かな焦りを感じつつ反論した。
「お前は自分たちの群れのため……お前たち全体の目的を実現するために戦っているのではないのか?」
「ワタシタチハ、違ウ」
彼女は急に目を大きく開いて笑ったようだ。感情と表情もあるようだ。
やはり笑っている。
だが私はその笑顔を見て妙な感覚に捉われた。彼女の顔……どこかで見覚えが有るのだ。
そんな私の想いは露知らず彼女は得意気に続ける。
「私たちには国モ義務モ、ナニモナイ。考エル必要モナイ」
そこまで聞いた私はハッとした。このままではコイツの主張に呑まれてしまうぞ!
私は寛代をチラッと見てから反論した。
「お前たちは……自分勝手に戦っているというのか? その割には組織だった行動が出来ているな」
白い頬を、やや紅潮させながら彼女は続けた。
「フ……ワタシタチニハ組織も階級モナイ。命令スルコトモナイ……ミンナ平等ダ。強制サレルコトモナイ」
私が感心するのは、そんな集団なのに、よくあれだけ統制のとれた攻撃が出来るな、という点だ。
だが私は腕を組んだ。
「何となく……釈然としないな」
私の反応に彼女も、こちらを見詰める。それは不思議な対話だ。
確かに、こいつの頭はよく切れるようだ。しかし主張する理論は破綻している気がする。
そう……彼女の主張は一見、自由と平等を謳っているようでありながら、その実、自分勝手で自己中心的じゃないのか?
うまく説明できないが、やはりこいつらとは相容れない気がする。
しかし……出来ることならせめて戦いを避ける道はないものか?
「深海棲艦……」
私は苦し紛れに呟いた。
何とか彼女を説得出来ないものか? うーん、でも理屈とか議論は苦手だ。
すると彼女(深海棲艦)は、少し険しい表情になった。
「ワタシノ中ニアル想イハ……オ前ノ存在ヲ、タダ消シ去ルコトダケダ」
「なに?」
要するに最初に日向が予測した通り。こいつらの目的は私の生命を狙うことなのだ。
鳥肌が立った。
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