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フロンティアを駆け抜けて
少年のラストオーダー
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分の勝手な思い込みでしかなかったのかと不安になる。ダイバは帽子の鍔に手を当てる。そして何かを考えているようだった。数秒の沈黙の後、答える。

「……確かめたいんだ」
「えっ?」
「ジェム、前戦った時……君にポケモンバトルの才能がないって言ったのを覚えてるかな」
「忘れるわけないわ……私のせいで何も出来ずにポケモン達が倒されて、あんなこと言われて……辛かった」

 メタグロスに圧倒され、倒れるラティアスに泣きつく自分に言い放った言葉は鉄拳で殴られたように痛かった。ジェムが一番最初に味わった敗北感と無力感は一生忘れないだろう。

「昨日バトルタワーに入るまでは君のことをチャンピオンの娘っていう僕よりポケモンバトルに恵まれた立場の癖に才能のない勘違い女だって思ってた。でも今は、ほんの少しだけ違う」
「ほんの少しなんだ……」

 ダイバが頷く。らしい物言いだと思いつつも、否定は出来ないジェム。ドラコとアルカは二人の会話を黙ってみていた。

「でも昨日一緒に戦って僕は感じたんだ。君は特別な生まれの癖に才能はないし欠点も多いけれど、優しくて、まっすぐで……児童文学の主人公のように力強い。もしかしたらもう僕よりもずっと強いのかもしれないと思う」
 
 ダイバは帽子の鍔を上げ、ジェムをまっすぐ見て言う。ジェムは思いがけない言葉に顔を赤くした。

「そんな……ダイバ君が私のことそんな風に言ってくれるなんて、全然思わなかったな、あはは……」
「だからこそ」

 ものすごく厳しかったダイバが褒めてくれて嬉しいやら気恥ずかしいやらの気分になるジェムだが、ダイバの方には一切の澱みもなく、むしろバトルで倒すべき敵を見る目をジェムに向ける。


「君に勝ちたい。あの時とは全く違う強さを手に入れたジェム、ここにいる誰よりも勝ちを望まれている主人公に……僕が勝って、僕の手でチャンピオンに勝ちたい」


 数々の褒め言葉は、勝てる確信がない強敵相手だからこそ。自分がジェムの事をどう見ているか本心を伝えた上で勝つという決意。ジェムもその態度に気が引き締まる。

「これが僕が君にする最後の命令。……ジェム、僕と勝負してくれるよね? 勝ったらシンボルはもらう。僕が負けたらジェムにシンボルを渡す」

 命令、と言いつつもお願いする言葉になっているのはやはりジェムに対する心境の変化だろう。ジェムも言葉の代わりに唾を飲み込み、口を開く。

「……わかったわ。ダイバ君が私にそこまで言ってくれたんだもの。お互いに真剣に勝負しましょう。今日は……負けないからね!!」
「じゃあ、ご飯が終わって勝負のルールが決まったら僕の部屋に来て。……そうだ、ルールはバトルフロンティアにあるルールの中から決めてね。そういう
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