想起
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銀ノ月》で斬り払う。
「早く逃げなさい!」
しかして二本あるうちの一本だけしか斬り払えなかったものの、残る一本は雷のように接近した弾丸によって、無事タンクプレイヤーが逃げるだけの隙を作る。もちろんその一撃の主はシノンであり、二度目の射撃音とともに俺の目の前にあった鋏も吹き飛ばされ、一瞬だけ本体への道が開かれた。
「うわぁぁ!」
「せっ!」
HPが減って逃げるタンクプレイヤーをカバーしながら、深々と突き刺すまでの隙はなかったが、本体に一撃を振るうだけの時間はあった。ようやく二撃目が炸裂すると、またボスが苦しみとともに暴れ出し、二対の鋏が俺を標的に突き刺さんと襲いかかった。
「っ……!」
ボスのヘイトを稼ぎすぎてしまい、逃げられる隙もなく、近接戦を交代するような相手もいない。日本刀《銀ノ月》を油断なく構え直し、ボスの乱舞を防ぎきるべく息を吸う。
「せぇぇぇっ!」
一撃、二撃、三撃、四撃、五撃――鋏の乱舞を全て見切りながら、日本刀《銀ノ月》は全てを致命傷から外すように弾く。裂帛の気合いによる防御にボスの攻撃が届くことはないが、削りダメージが徐々に俺のHPを削っていく。
さらに俺の頬を、背後から放たれた雷が掠めた。
「そのまま!」
その雷は俺を通り越してボスに炸裂し、甲羅の中に隠れていた口や目にピンポイントに叩き込まれていく。そのまま第二射や第三射が、俺の背後から吸い込まれるようにボスを狙撃していき、少しでも射線がズレていれば蜂の巣になっていたのは俺だっただろう、と思わせる。
「ショウキ!」
回転体当たりをしているならともかく、足を止めて俺に構っていれば、シノンにとっては止まっているのと同じだった。俺がボスの乱舞を防いでいる隙に狙いをつけていたシノンにより、急所を的確に撃ち抜かれたボスが、こちらへの攻撃を取り止めて逃げ出そうと甲羅の中に入ろうとする。
「はぁっ!」
ただ、俺とてそれを見逃すはずもない。退避を優先した為に攻撃が薄くなった隙をついて、日本刀《銀ノ月》の突きが弾痕まみれの本体に炸裂すると、ボスである《ザ・ストリクト・ハーミット》はポリゴン片となって消えていく。それを引き金にしたかのように、拡張現実は元の現実に戻っていき、どうやら本当に今日のボス戦は終わったようだった。
「お疲れ様」
「お疲れ。ありがとうシノン、助かった」
あいにくと目的だったノーチラスはいなかったが、今回のボス戦によってまたランキングが上がったため、ボーナスも増えてどうにか戦いにはなりそうだ。《オーディナル・スケール》を終了しながら、援護からメイン火力まで全てを行ってくれたシノンに感謝する。
「お礼なら、そこの自販機の飲み物でいいわよ」
「ちょうど
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