想起
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められていて、恐らくは俺も同様の瞳をしているだろう。その視線の交錯だけで分かっているだろうが、再確認のためにキリトは口を開いた。
「諦めてないだろうな」
「当たり前だろ」
――聞かれるまでもない。レインにアスナ、リズの記憶は俺たちが取り戻すとばかりに、お互いに意志を口に出しあった。
そして時刻は夜と呼ぶに相応しくなり、俺はユイのボスの予想出現ポイントに到着した。アスナが記憶を失ってしまったことは、皮肉にもこのボス戦にノーチラスが現れることの裏付けになっていた。
問題は複数のボス出現ポイントのどこにノーチラスが来るか分からないことで、手分けして……と言いたいところだったが、もう被害者を出すわけにはいかない以上、人手は俺とキリトだけだ。カバー出来るポイントは少ないが、こればかりは祈るしかない。
「くっ……」
「相変わらず、余裕がない時は酷い顔してるわね」
ボス戦が始まるまでの短い時間、ノーチラスを探すべく走り回ったものの、もちろん簡単に見つかるようなことはなく。息を切らせながら舌打ちを放つ俺に対して、心の底から呆れたような言葉が向けられ、すぐさま振り向くとそこには。
「死銃の時もそんな顔だったわよ、あんた」
「シノン? なんで……」
「私はSAO生還者じゃないもの。奪われる記憶なんてそもそもないわ」
そこに立っていたのは、腕組みしてこちらを見るシノンだった。確かにこの記憶障害は、今のところSAO生還者にしか発生しておらず、その点では心配ないと言えるが……ひとまずは、酷い顔というのを意図的に直した。
「まあまあ、さっきよりマシね。見栄を張るなら最後まで張りなさい」
「……アドバイスに助太刀、色々どうも。キリトの方には――」
「直葉が行ってるわ。お兄ちゃんを守るんだーってね」
予想はしていたが、ARに不向きなキリトの方には直葉が行っているらしい。すこぶる気合いが入っているだろう直葉の姿と、困惑しながらも押し切られそうなキリトの姿が浮かんできて、微笑むぐらいの余裕を取り戻した。そしてふと、《オーグマー》を眼鏡と噛み合わないようにセットするシノンの横顔を見て。
「何?」
「いや……キリトじゃなくて悪かったなって」
「は? 別に、家が近い方に来ただけなんだから。関係ないわよ」
……そういうことにしておこう。そうして時刻は9時となり、シノンとともに端末を構えると。
『オーディナル・スケール、起動!』
――その言葉とともに、世界は拡張現実に侵蝕されていく。近くにあったドームは完全に消失し、代わりのように逃げ場をなくすビル群が周囲に散乱して、まるでそれは擬似的なドーム内部のようだった。
「甲殻類ね……」
そしてそん
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