暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
想起
[5/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
められていて、恐らくは俺も同様の瞳をしているだろう。その視線の交錯だけで分かっているだろうが、再確認のためにキリトは口を開いた。

「諦めてないだろうな」

「当たり前だろ」

 ――聞かれるまでもない。レインにアスナ、リズの記憶は俺たちが取り戻すとばかりに、お互いに意志を口に出しあった。


 そして時刻は夜と呼ぶに相応しくなり、俺はユイのボスの予想出現ポイントに到着した。アスナが記憶を失ってしまったことは、皮肉にもこのボス戦にノーチラスが現れることの裏付けになっていた。

 問題は複数のボス出現ポイントのどこにノーチラスが来るか分からないことで、手分けして……と言いたいところだったが、もう被害者を出すわけにはいかない以上、人手は俺とキリトだけだ。カバー出来るポイントは少ないが、こればかりは祈るしかない。

「くっ……」

「相変わらず、余裕がない時は酷い顔してるわね」

 ボス戦が始まるまでの短い時間、ノーチラスを探すべく走り回ったものの、もちろん簡単に見つかるようなことはなく。息を切らせながら舌打ちを放つ俺に対して、心の底から呆れたような言葉が向けられ、すぐさま振り向くとそこには。

「死銃の時もそんな顔だったわよ、あんた」

「シノン? なんで……」

「私はSAO生還者じゃないもの。奪われる記憶なんてそもそもないわ」

 そこに立っていたのは、腕組みしてこちらを見るシノンだった。確かにこの記憶障害は、今のところSAO生還者にしか発生しておらず、その点では心配ないと言えるが……ひとまずは、酷い顔というのを意図的に直した。

「まあまあ、さっきよりマシね。見栄を張るなら最後まで張りなさい」

「……アドバイスに助太刀、色々どうも。キリトの方には――」

「直葉が行ってるわ。お兄ちゃんを守るんだーってね」

 予想はしていたが、ARに不向きなキリトの方には直葉が行っているらしい。すこぶる気合いが入っているだろう直葉の姿と、困惑しながらも押し切られそうなキリトの姿が浮かんできて、微笑むぐらいの余裕を取り戻した。そしてふと、《オーグマー》を眼鏡と噛み合わないようにセットするシノンの横顔を見て。

「何?」

「いや……キリトじゃなくて悪かったなって」

「は? 別に、家が近い方に来ただけなんだから。関係ないわよ」

 ……そういうことにしておこう。そうして時刻は9時となり、シノンとともに端末を構えると。

『オーディナル・スケール、起動!』

 ――その言葉とともに、世界は拡張現実に侵蝕されていく。近くにあったドームは完全に消失し、代わりのように逃げ場をなくすビル群が周囲に散乱して、まるでそれは擬似的なドーム内部のようだった。

「甲殻類ね……」

 そしてそん
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ