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SAO−銀ノ月−
想起
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「そんなことを言ってるんじゃない! アスナのことだけじゃない、お前は……お前は怖くないのかって聞いてるんだ!」

「……怖いに決まってるでしょ!」

 ――リズの絶叫が響き渡り、店内は水を打ったように静まり返った。ある日突如として大事な記憶を失い、原因も分からないなどと、リズも怖いに決まっている。そんな当たり前のことをわざわざ蒸し返すなんて、気が立っていたにしろ……と、しばしの間にこちらの頭もクールダウンしていく。

「……ごめん」

「ううん。確かにあんたからしたら、なんでアスナのことをって感じよね」

 こちらの謝罪に対して、同じく落ち着いたリズも申し訳なさそうに首を振った。そうして抱き合えるような距離のまま、リズは涙目でこちらを見上げてきた。

「あたしらしくなくさ、怖いの……ALOのことも忘れちゃうんじゃないかって。でもそれ以上に、SAOのことを思い出せなくて、あんたに申し訳ないの」

「それは……」

「あんたに初めて会った日……ううん、SAOであんたと過ごした日のことなんて、絶対に忘れたことなかったのに……このまま、あんたのことを全部、忘れちゃうんじゃないかって……」

 とつとつと語り出すリズに何か声をかけるより早く、リズは震えながらこちらの手を握り締めていた。まるで身体の芯まで冷えた者が、体温を取り戻そうと暖かいものにすがるように。震える手を力の限りに握り返すと、ようやくリズの顔に微笑みが浮かんでいた。

「……だから、あんたにはこんな思い、して欲しくない」

「え?」

 こんなこと言うと、またあんたに怒られちゃうだろうけど――と、リズは続けながら、こちらの疑問に答えた。

「あとは菊岡さんとかに任せて、あんたはもう手を引いて? あんたの記憶までなくなったら、あたし……」

 レイン、リズ、アスナ、そして恐らくはクラインたちも。さらに全国でも少数ながら同様の被害が出ているこの事件は、キリトの手引きもあって確かに菊岡さんが捜査を始めているだろう。もしも狙いがSAO生還者であるのならば、もちろんその中には俺も含まれる。

「ね? ショウキ、お願いだから……」

「……ごめん、リズ」

「え?」

 いつになく弱気になって、震えながら懇願するリズを前にしてしばし逡巡したものの、断腸の思いでそのリズの手を振り払った。本当なら自分だって、ここで永遠にリズを慰めていたい。自分たちが初めて会ったことを、物語のように聞かせてやってもいい。新しい思い出を作ってやろうと、どこか冒険に出かけるのもいいだろう。なんなら、このまま震えるリズを抱きしめてあげることだって。

「俺は……逃げない」

 ――それでも。リズに手を出された以上、俺に手を引くという選択肢が存在することはない。例えそ
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