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SAO−銀ノ月−
想起
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てくれないか」

 とにかく、これ以上の被害者を出す訳にはいかない。何とか絞り出した言葉は、アスナに庇われたシリカのことを心配する言葉だった。もちろん心の底からの言葉だったが、その裏にはもう《オーディナル・スケール》には関わるな――という意志を込めて。

「でも……ああ、そうさせてもらうよ」

 ショウキさんまで記憶を失ってしまえば――というルクスの心配そうな視線が突き刺さったものの、俺はこの件から降りる気はないとばかりに目を逸らすことはなく。こちらの決意が伝わったのか、ルクスは寂しそうな笑顔を浮かべながら、そのままこの世界からログアウトしていった。

「クソッ……」

 誰もいなくなった空間に俺の舌打ちが響き渡りに、無意識に髪の毛をガリガリと掻いていた。シリカはルクスに任せておくとして、これから自分はどうするかという考えが、グルグルと脳内で無数に回っていく。ただし回るだけでまとまることはなく、ひとまずはアスナの記憶を取り戻そうと、浮遊城の中を回っているキリトを待つことになりそうだ。

「――ショウキ!!」

「……リズ?」

 ――そこに突如として入ってきたのは、見慣れた姿のままのリズ。こちらの驚きにも構うことはなく、リズはそのまま店内にずかずかと入ってくると、鬼気迫る表情のまま両手で俺の肩を掴んできた。

「どうしてこっちに……」

「そんなことはどうでもいいの! アスナが……アスナがあたしと同じようになったって本当!?」

 リズの記憶を取り戻そうとしたら、アスナの記憶をも失ってしまった――などと言えるわけもなく、わざわざこの二号店の方でルクスに会っていたというのに。どこから伝わったのか、鬼気迫る表情から涙目になっていくリズに顔を逸らしながらも、肯定だとばかりに小さく頷いた。

「SAOの記憶がなくなるなんて、あの子が耐えられる訳ないじゃない……!」

「ッ……!」

 ……アスナが人一倍、あの浮遊城について思っているということは、誰にでも分かる周知の事実だった。親友であるリズならなおさらだろう、アスナの身に起きていることに涙を流すリズを見て、俺は――どうしようもなく声を荒げた。

「どうして人の心配をしてるんだよ! こんな時まで、お前は!」

「……だってそうでしょうが! アスナは一番、あのゲームの記憶を大事にしてるんだから!」

 自分だって全く同じ状態だろうに、それでも他人を心配するリズに、どうしてか無性に腹が立った。こちらの糾弾に一瞬だけ虚を突かれたように黙り、俺の肩から手を離したリズだったが、すぐにこちら以上に声を荒げて言い返してきた。

「それともあんたは、記憶失って怖くて何も考えられない……なんて、部屋の隅で縮こまってる方が好みだった? なら残念だったわね!」


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