暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第168話 蒼穹が落ちる
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 それは世界樹(ユグドラシル)より現れたヴァリャーグ(向こう岸の人々)たちに、このガリアが支配されていた頃の話。
 蒼穹に魔狼フェンリル(呑み込むモノ)が細き尾を引く時、南に在ると言われている炎の地獄(ムスペルヘイム)よりナグルファル(蒼穹翔ける船)に乗ったスルトが訪れる。

 それまでの前掛かりの体勢から、その場にちゃんと……几帳面な彼女に相応しい形に座り直した直後、普段通りの淡々とした様子で語り始めるタバサ。今の彼女からは、その直前まで感じさせていた、妙に妖艶な気配を感じさせる事もなく……。また、その内容は地球世界の北欧神話、ラグナロクの部分に重なる部分が多い。
 但し、故に――

「スルトが剣を振るう度、広がる滅びの炎――
 太陽、月はその力を失い――そして蒼穹が落ちて来る。……そう言われている」

 ――世界の破滅。彼女の語る内容はまさにラグナロク。世界の終末の日と表現された物語に相応しい内容だと思う。

「伝説では、その時に焼け落ちたユグドラシルの残った部分を再利用したのがラ・ロシェールの桟橋。スルトの剣の跡、もしくはフェンリルの牙の痕とも言われているのがラグドリアン湖」

 そう言えば、長門有希が暮らしていた地球世界に流される前に、新しい彗星が観測された。そう言う話をイザベラがしていたか。それに、確かその時にフェンリルがどうのこうのと言うガリアの王家に伝わる伝承も話していたような記憶がある。
 普通に考えるのなら一笑に付すべき内容。そもそも、この内容が過去に実際にあった出来事だと言う確実な証拠がある訳ではない。

 そう、証拠はないのだが……。
 少し思案顔を浮かべる俺。
 ただ、その言われている世界樹とやらを使ったラ・ロシェールの飛空船用の桟橋は現実に自分の目で見ているし、その巨大さや規模から、このハルケギニア世界が地球世界とは違う成り立ちから出来上がった世界だと強く感じさせられたのもまた事実。それに、ラグドリアン湖の湖底には地球世界の伝承で世界樹の根元に存在していた、と語られているミーミルの井戸も存在するらしい。
 更に言うと、このハルケギニアは表の世界にも魔法が存在している世界。ならば北欧神話の内容に等しい出来事が過去に起きて居たとしても何も不思議ではない。

 それに――と、そう視点を切り変える俺。

 それに、先ほどのタバサの話の中に始祖ブリミルや勇者イーヴァルディの名前がなかったのも気になる。俺が覚えている限りに於いて、このハルケギニア世界で一般的な昔話にはこの両者のどちらかの名前が存在していた……と思う。そして、俺の推測では、イーヴァルディは当然として、その始祖ブリミルと呼ばれる存在もおそらくは架空の存在。何らかの意図の元、創作された存在だと考えている。
 そのふた
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ