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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第168話 蒼穹が落ちる
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な理由は、人間と言うのは三歳までに出会った相手を異性として認識しない習性がある……と言う事らしいから。つまり、俺は彼女を俺の方の事情に巻き込まない為、最初に僧院より連れ出した心算だった。
 ……そのまま僧院で育てられると、今回の人生に於けるシャルロットのように善からぬ意図に因り、彼女を利用しようとする人間が現われる可能性が高いと思ったから。
 そしてその中で、幼い頃より姉弟同然に育った相手を異性として意識出来ないのなら、生命が危険だから……と言う理由で後に起きる可能性の高い聖戦、その最前線から遠ざける事は可能だと考えたから。

 当然、前世の両親には彼女の出自は告げて有った。
 問題は俺の意図――。彼女をハルケギニアで起きる可能性の高い混乱に巻き込まない為に。オルレアン大公シャルルやロマリアの狂人どもの野望にこれ以上、巻き込まない為に、彼女が捨てられて居た僧院より連れ出した……と言う意図をちゃんと告げて居なかった事。
 そもそも起きるかどうか分からない聖戦の事を告げたトコロで信用されるかどうか疑問があったし、最初の……転生した最初の段階ではその聖戦を起こさない心算で行動していたので、わざわざ不確定の未来の事象を話す必要はない、とそう考えていたのだから。

 もっとも、その頃の俺は、後に俺自身がガリアの王太子にでっち上げられるなどと言う事を知らなかった為に、そのような齟齬が発生したのだが……。
 前世の両親の意図も分かる。抜群の血筋を持ちながら、実家の介入がまったく為されない王妃と言う存在は王……特に若い王に取っては大きい。確かに、その場合は王妃……つまり、今回の人生のタバサの後ろ盾が不安になる可能性もゼロではないが、前世の俺の実家はガリアの東方を守る侯爵家。更に言うと、母親の実家は王家のスペア。本来なら、この家から王妃が出て居たとしても何ら不思議ではない家。
 両家ともあまり国政に口出しをして来るような家ではなかったが、それでもタバサの影の後ろ盾となるには十分過ぎる力を持っていたので問題はなかった。

 つまり前世の俺は彼女を出来るだけ戦場から、()()から遠ざけようとし、逆に両親は彼女を俺の片翼となるべく育て上げた……と言う事になる。

 俺の制止を受け、ほんの一瞬だけ不満そうな気配を発するタバサ。まぁ、流石にあのタイミングで男の側から制止すると言うのは普通あり得ないとも思うのだが。もっとも、前世の姿の彼女ならあまり問題はないとも思うが、今のローティーン風の彼女の姿では流石に色々とマズイ事もある……と思う。
 しかし、それも本当に一瞬の事。おそらく俺の妻や恋人であるよりも、俺の相棒であろうと考えているはずの彼女とすれば、頼られて悪い気はしない。
 ……はず。

「ガリアのサヴォア地方に伝わっている古い言い伝え
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