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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十九話 互角
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今が有る、それで十分だろう。思わず苦笑が漏れた。
「どうした?」
「いや、なんでもない。それよりこれからどうするのだ。予定が有るのか?」
「オフレッサー閣下のところに行こうかと思っている。御礼と御祝いの挨拶だ。卿もどうだ?」
リューネブルクが誘ってきた。確かに今回の戦いではオフレッサーに随分と世話になっている。挨拶に行くべきだろう。それとキスリングの事を聞かねばならない。彼の処遇はどうなるのか、リューネブルクも知りたいと思っているはずだ……。
「そうだな、俺一人では行き辛いが卿が一緒なら助かる。そうしよう」
「艦隊指揮官にとっては装甲擲弾兵総監部は行き辛いか」
「まあそうだ、イゼルローン要塞では装甲擲弾兵に胡散臭そうに見られて正直腐った」
俺の言葉にリューネブルクが笑い声を上げた。気が付けば俺も笑っていた。
オフレッサーは今回のイゼルローン要塞攻防戦での功績が認められ元帥に昇進することが決まった。宮廷の一部にはオフレッサーがヴァレンシュタインを帰した事で反対する意見もあったらしい。
だが軍務尚書エーレンベルグ元帥、統帥本部総長シュタインホフ元帥がオフレッサーの行為を擁護した。
“オフレッサー上級大将の行動は帝国軍人の矜持を守ったものである。それを認めねば帝国軍人はこれ以後何を規範として戦うのか? 我らをただの人殺しにするつもりか?“
両元帥の擁護によりオフレッサーは帝国元帥になることが決まった。陸戦隊の指揮官が元帥になるのは帝国の歴史の中でも数えるほどしかない。宇宙空間での戦いは艦隊戦が中心となる。そんな中で地上戦を主任務とする陸戦隊の活躍の場は極めて少ない。元帥にまで登りつめたオフレッサーは稀有の存在と言える。
悪い人事ではない、素直にそう思える自分が居た。以前なら石器時代の原始人が元帥かと冷笑しただろう。良く知りもせず、一部分だけでその人物を判断しようとしていた。オフレッサーも、そしてヴァレンシュタインも……。
気が付けばペンダントを握りしめていた。キルヒアイス、俺は大丈夫だ。お前が居なくなった事はどうしようもなく寂しい。だが俺はまた一歩前に進むことが出来た。これからも進み続けるだろう、だから俺を見守ってくれ……。
装甲擲弾兵総監部の総監室を訪ねると、二十分程待たされた。どうやら俺達以外にも祝辞を述べに来た人間が居るらしい。まあ無理もない、帝国元帥と上級大将では一階級の違いしかないがその影響力には雲泥の差が有る。
年額二百五十万帝国マルクにのぼる終身年金、大逆罪以外の犯罪については刑法を以って処罰される事は無く元帥府を開設して自由に幕僚を任免する事が出来る特権を持つ……。金、名誉、地位、特権、それを利用しようと近づく人間は当然いるだろう……。
部屋に入り、挨拶をしようと
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