巻ノ八十九 水を知りその十二
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「むしろしきりに動いてくれた方がよい」
「姉君の茶々様の為に」
「是非ですな」
「動いて頂きたいのですな」
「だから止めぬ」
それも一切というのだ。
「このままじゃ」
「わかりました、では」
「お江様についてはです」
「何もしない」
「その様に」
「そうせよ。何はともあれ孫も出来た」
またこの話をしたのだった。
「よいことじゃ」
「左様ですな」
「ではです」
「その喜びも思いながら」
「そうしてですな」
「駿府に入ろうぞ」
そうしようというのだ。
そしてだ、家康は本多正信にはこう言った。
「御主は江戸に残ってもらう」
「そうしてですな」
「竹千代を助けよ」
「わかり申した」
「その様にな、そしてじゃ」
今度は子の正純を見て言った。
「御主はじゃ」
「駿府にですな」
「来てもらう」
こう言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
「そして御主もじゃ」
崇伝もというのだ。
「よいな」
「はい、駿府にですな」
「来てもらう」
「わかり申した」
「そうしてじゃ」
「天下固めをですな」
「進めていくぞ」
「確かに」
「やることは多い」
家康は遠くを見る目で述べた。
「実な。しかしそれを全て終える」
「それまではですな」
「上様も」
「生きるねばのう」
こうも言ったのだった。
「是非な」
「ですな、では」
「ご養生も」
「しておるぞ」
笑って言うのだった。
「天下の為にな」
「ですな、それではです」
「我等も及ばずながらです」
「天下の為にです」
「この身を」
「すまんのう、では懐かしい駿府に戻ってな」
そうしてというのだった。
「天下固めを行うぞ」
「是非共」
「そうしましょうぞ」
幕臣達も頷く、家康は将軍になっただけでなくそれからも見据えて動いていた。それはまさに天下を見据え考えているからこそのものだった。
巻ノ八十九 完
2017・1・4
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