巻ノ八十九 水を知りその十一
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「そして駿河を手に入れてから」
「本拠されて」
「そうしてでしたな」
「充実して政を執られていた」
「そうでしたな」
「江戸より遥かによい」
実にというのだ。
「だからな」
「そこに戻られるのはよい」
「そうですな」
「それに竹千代にもじゃ」
家康はこのことは笑みを浮かべて言った。
「遂に跡継ぎが出来たな」
「はい、待望のご子息が」
「中納言様にも出来ましたな」
「遂に」
「よいことじゃ」
このことをだ、家康は我がことの様に喜び顔を綻ばさせた。
「あの孫がやがてはな」
「将軍となられますな」
「第三代」
「そうなられますか」
「血は続いてこそじゃ」
そうあってというのだ。
「よいのじゃ。だからな」
「それで、ですな」
「このことについてもですな」
「手を打たれますな」
「わしの新しく手来た子達にもそれぞれ家を持たせ」
そしてというのだ。
「若し竹千代の家に何かあればな」
「そのお子達の家がですか」
「跡を継げる様にしておく」
「そうもされますか」
「尾張や紀伊、水戸等がよいか」
この三つの場所にというのだ。
「大名として家を持たせてな」
「そしてですか」
「徳川本家に何かあれば」
「その時は将軍になって頂く」
「その手筈も整えておきますか」
「そうする。どうも竹千代はおなごにはな」
秀忠のこともだ、家康は話した。
「淡白というかこちらでも律儀過ぎるのう」
「はい、奥方はお江様だけです」
「ご側室の方はどなたも置かれませぬ」
「お一人たりともです」
「女中にも一切手をつけられず」
「実に生真面目です」
「わしには我慢出来ぬ」
妻が正室しかいないということはというのだ、今も側室を何人も持っている家康にとってはなのだ。
「あの様なことはな」
「いや、それが竹千代様ですな」
「あの方ならではですな」
「至って生真面目で」
「律儀な方です」
「全くじゃ、それでじゃが」
こうもだ、家康は言った。
「その竹千代のじゃ」
「お江様ですか」
「あの方については」
「その動きわしは一切止めぬ」
彼女のそれはというのだ。
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