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真田十勇士
巻ノ八十九 水を知りその十

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「わしの考えは変わらぬ」
「はい、あの地と江戸が手に入りますと」
 崇伝が言ってきた。
「幕府は東西で天下を治められますし」
「大坂は都にも奈良にも近くな」
「しかも銭が集まります」
「だからあの地が欲しいだけじゃ」
「左様ですな」
「そしてそれと共にな」
 家康はさらに言った。
「婚姻は済んだ、ならば次じゃ」
「はい、天下固めですな」
「天下を収める仕組みを作る時ですな」
「その時が来ましたな」
「それでは」
「江戸は竹千代に任せる」
 家康はここではっきりと言った。
「将軍の位も譲る」
「そしてですな」
「上様は駿府に入られ」
「あの地においてですな」
「天下を収める法度に役所を考えていこう」
 こう考えていた、今の家康は。
「是非な」
「はい、それでは」
「その様にしていきましょう」
「その時が来ました」
「それでは」
「そろそろそうする」
 将軍の位を秀忠に譲り駿府に戻るというのだ。
「あの懐かしい場所でまた暮らそうぞ」
「やはり駿府はですな」
「上様にとってはよい場所だと」
「そう言われるのですな」
「そうじゃ、どうも江戸は好かん」
 城を築いているがとだ、家康はこの地については苦笑いで述べた。ようやく築かれた本丸の御殿の中で言うのだった。広いが造りは意外と質素でありまだ木の匂いがする。
「やはりわしはな」
「駿府ですな」
「あの地ですな」
「馴染みの場所は」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「あの地じゃ、だからな」
「あの城に戻られることがですか」
「楽しみですか」
「そうなのですな」
「かなりな。早く戻り」 
 何処かうきうきとさえしていた、今の家康は。
「そしてな」
「あの城で、ですな」
「過ごされるのですな」
「そうしようぞ」
 本多達にも述べた。
「それが楽しみでもある」
「やはり駿府ですか」
「上様にとっては」
「あの城ですか」
「幼い頃におってな」
 今川家の人質だった時だ、この頃は今川義元に厚遇され人質でありながらもよき日々を送っていたのだ。
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