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真田十勇士
巻ノ八十九 水を知りその八

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「やはり」
「武田家の方だからな」
「左様ですな」
「そうじゃ、しかしな」
「そのことが四郎様をお救い出来なかった」
「このことが無念でならぬ」
「それがしもそう思いまする」 
 幸村もだ、彼にとっても勝頼は主君でありしかも何かと引き立ててくれた。だからこそこうも言うのである。
「残念です」
「そうじゃな、御主も」
「やはり」
「そしてそのことを忘れずにじゃ」
「次は」
「果たしてみせる」
 勝頼を守れなかった無念も胸に抱いてというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「わしは何があろうとも生きるぞ」
「さすれば」
「御主達は御主達の為すべきことを果たせ」
「修行をしてですな」
「強くなれ、よいな」
「わかり申した」
 幸村は確かな顔で答えた、そしてだった。
 彼は彼の鍛錬に励むことにした、その中で天下の話も集めていたがその話は幸村にとってはやはりというものだった。
「後藤殿はな」
「やはりですか」
「そうなるとですか」
「殿は思われていましたか」
「うむ、どうしてもな」
 こう話を伝えた十勇士達に述べた。
「そうなるとしかな」
「思えませんでしたか」
「黒田家のことを聞きますと」
「最早」
「黒田殿と後藤殿の不仲は有名であった」
 このことはというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうなるとですか」
「殿は思われていましたか」
「うむ」
 実際にという返事だった。
「拙者もな。しかしな」
「はい、どうして後藤殿とお会いするか」
「それが問題になってきましたな」
「天下の何処におられるのかわからなくなるので」
「そのことは」
「そうじゃな。しかし天下に知られた方」 
 後藤、彼はというのだ。
「だから若しやするとな」
「すぐに何処におられるかわかるやも知れぬ」
「そうも思われますか」
「若しやな。そしてそうであるなら」 
 その時はというのだ。
「すぐにお会いしに行くぞ」
「お会い出来る機会を逃さず」
「必ず」
「そうするとしよう」
 こう十勇士達に言うのだった。
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