SIDE:A
第十六話
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泡の術。本来の用途は巨大なシャボン玉サイズの水の塊を複数形成し、相手にぶつける術だ。殺傷力は低いが雷遁の術と掛け合うことで色々な用法が取れるという利点がある補助系の忍術。
人の頭ほどの水の塊を生み出すと鍋の中に落とす。丁度いい大きさだったようで鍋としてベストな量になった。あとは肉や野菜を入れるだけだ。
「じゃあクーちゃんは水が沸騰したら順次肉を切って入れていって。俺は鍋に使えそうな山菜を探してくるわ」
「うむ、任せたのじゃ」
「時間はあまり掛からないからー」
この二十日間で大体の生息図を把握してきた。とはいっても小川を挟んだ森の半分ほどの面積に限るけど。どこに何があるのかは俺の体が覚えているから視覚を封じた状態でも余裕余裕。
鍋に合いそうな山菜をいくつか採取して戻ると、早速肉を食べて始めていた。
「むぐむぐお帰りなのじゃ」
「はいはい、ただいま」
水泡の術で山菜を洗い、鍋に投入してと。
じゃあ俺も食べようかな。
「――いただきます」
手を合わせ、この鍋となった熊と美味しい山菜に感謝の念を捧げる。
木の枝を苦無で切って加工した手製のチョップスティックを片手に鍋をつつく。あー、やっぱ熊肉うめぇわ。
なんか油がすごい載ってるな。上等な熊だったのだろう。
「むぐむぐ……。うむ、偶然見つけてな。なかなか活きの良い奴であったわ」
「へー、クーちゃんにそう言わせるなんてね。そういえば俺もここで友達になった奴がいるよ。何度も拳を交えたライバルなんだ。熊のゴン太ってやつでな、左目に十字の傷跡があるんだけど――」
「ぶふぉっ!?」
「うおっ、どうした急に!」
急に噴き出したクーちゃん。肉を吐く乙女を見てしまった。……記憶から消しておこう。
「い、いやすまぬ。ちょっと予想外な話を聞いてな」
口の端に付いた汁を手で拭う。さすがのクーちゃんも羞恥心を感じずにはいられないようで顔を赤らめていた。
今までこんな反応を示したことないのにと不思議に思う。元野生の狐なのかと疑問に思うほどクーちゃんの食事は優雅で綺麗なのだ。
首を傾げる俺だったが、ハッと顔色を変えた。まさかだとは思うが……。
「も、もしかしてこの肉……ゴン太じゃ、ないよな?」
「……」
「……」
「……恐らく、そやつだと思うのじゃ」
「なんてこった……。ゴン太、お前、こんな姿になっちまって……。くそ、次こそ決着をつけようと思ってたのに……!」
何もこんな形で命の巡りを理解しなくてもいいのに! 神様ってやつはなんて残酷な
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