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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第二十六話「初デート 後編」
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トは、世界というものに興味がありませんでした」


「エスト?」


 依然、視線は真っ直ぐ前を向いたまま、独白するように語り始める。


 なにか、重大なことを――心の奥底に秘めていたものを見せてくれようとしているのだと、直感的に悟った俺は黙って彼女の話を聞くことにした。


「リシャルト、私はあなたを好ましく思っています。私を唯一受け止めることができる精霊使い。リシャルトと過ごす日常は楽しく新鮮に満ちていて、とても尊いものです」


「……」


「そんな貴方だからこそ、リシャルトに知ってほしい。私を――テルミヌス・エストという精霊を」


「テルミヌス・エスト?」


 エストの本名か? それとも真名?


 初めて耳にしたエストの名前についオウム返しで口にすると、銀髪の精霊が振り返った。


 その目には強い意思の光が宿っていて、無表情ながら真剣な雰囲気がひしひしと伝わってきた。


「はい。テルミヌス・エストが本名です。ただこの名は呼び難いようなので今まではエストと略称していました。以前の契約者がそう言っていましたから」


 以前の契約者か。


 よくよく考えれば、俺が精霊と契約を交わすのは初めてだが、エスト自身が初めてとは限らない。当然、俺と出会う前にも他の人と契約を結んでいた可能性も十分あった。


 ――なんか、面白くないな……。


 エストが俺以外の人の契約精霊となり、俺たちのように仲良くしている姿を想像すると胸の奥がムカムカする。


 そんな不快感を胸の奥に押し止めて表には出さない。今はエストの話を聞くのが大切だ。


「私が契約を交わした少女はとても優しい女の子でした」





   †               †               †





 エストが語ったのは遠い昔に起きた出来事だった。まだ大陸がいくつもの小国に別れて戦乱に明け暮れていた時代。


 辺境の名も無き村で育った、素朴で優しい少女は薪を拾いに山の中を散策していた。そこで古い祠の中に一本の剣が刺さっているのを見つける。


 それは何百年もの間、誰も抜くことが出来なかった聖剣だった。そんなことをつゆと知らない少女はなんの気なしに剣に手を掛けると、呆気なく抜いてしまう。


 抜いた剣は眩い光を放ち、やがて人の姿になって少女の前に現れ、自分のことを剣の精霊と称した。


 唐突にそんなことを口にする精霊に戸惑いつつ少女が語り掛ける。


『あなたは誰?』


『私は剣の精霊、テルミヌス・エスト。契約者であるあなたの剣となり、私のすべてを捧げましょう』


 少女は剣の精霊の言葉を無
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