生存のエスケープ
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ら生命の気配を感じる……。もしかしたら崩落で取り残された人がいるのかもしれない」
『穏やかじゃないですね』
「私が行く必要はないんだけど……しょうがない」
ということで見過ごす訳にもいかなくなった私は巻き込まれないよう慎重に瓦礫の中や上、隙間を通っていく。しかしあまりに狭いため、ざらついた地面や壁、所々出ている支柱に芯として埋め込まれる金属の突起物などに引っかかったせいで、私の着ているチュニックやスカートの一部が摩耗、少し破れてしまった。下着が見えるほどではないとはいえ、正直恥ずかしいが、まぁ生地さえあれば十分直せる範囲だった。
所々で逃げ切れず瓦礫に押しつぶされた人の手足が見当たる中を、何とも言えない気持ちで進んでいくと、やがて入り口から大体反対側の位置にまで来れた。私はそこで、崩れた支柱から突き出した金属の突起物に身体の中心を貫かれて血に塗れた、骨格は整っている茶髪の女性と、近くで倒れたトレーニング機器の山が奇跡的に作り出していた空間の中で、ベビーキャリーが装着されてある赤子を見つけた。
「……、あぁ……」
私の姿が見えたことで救助が来たと思ったのか、瓦礫の破片で床を叩いて位置を知らせていた女性は倒れ、生命の息吹が途絶えてしまった。赤子はトレーニング機器に守られていたおかげで奇跡的に無傷だったが、ピクリとも動かなくなった母親に小さな手を伸ばしていた。大人の手ならともかく赤子の手では届かない距離だが、私にとってそれは親子がもう二度と会えなくなったことを暗喩しているようにも見えた。
『子供が助けられるまで、母親の意地で持ち堪えていたんですね。冥王として、彼女の意志に敬意を送りましょう』
イクスが彼女の最後の足掻きを称賛する一方で、私は彼女の冥福を祈りながら、何者かを知るためにも名札を調べてみた。『“フロンティアジム所属コンディショニングコーチ” カザネ・レヴェントン』……名札には、そう書いてあった。でもここはギャラクシージム、名前と場所が違う。
となると……推測だが、担当していた選手の出張試合か、もしくは特別講師で呼ばれたとか何かでここに用事があったのかもしれない。コンディショニングコーチの資格がある人もまだ少なく、育児休業中であろう彼女がここに来たのも、そういった理由が関係している可能性がある。
そしてさっきの魔導師の言葉と今の時間帯を考えると、仕事を終えて帰ろうとした矢先に機械竜に襲撃され、殺人光線を受けて崩れてきた瓦礫に押しつぶされた。そして私が彼女達を見つけるまで、必死に音を立てて居場所を知らせていた。……はぁ。
「この世界は……普通に生きることすら許されない。何も悪いことはしていないのに、死は容赦なく降ってくる。誰もが望む平和で当たり前の未来なんて、もう強者しか享受できないのかな……?
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