生存のエスケープ
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。文明の光が星の光を覆い隠す……なんて言い方は大袈裟だけど、とにかく私はこういう空はあまり好きじゃない。だけど今は街にたどり着く必要がある以上、この光を頼りに海岸沿いを歩いていた。
薄暗い夜の海の波をBGMにしばらく歩くと、防潮堤の向こうに海岸沿いに伸びる道路を見つける。途中のT字路で海から離れるほど草原に囲まれていったその道路の向かう先には、ビル群が立ち並ぶ大都市の姿が見えた。
そして……偶然にも私は、その街に見覚えがあった。
「あれは……クラナガン? じゃあここって、第一管理世界ミッドチルダ!?」
『おや? 確か艦が墜落した場所は……んん?』
「次元世界に戻って最初に降り立ったのがミッドチルダだなんて……あぁ鬱だ……」
『鬱? なんでですか?』
「私、管理世界が特に苦手なんだ。マキナを……大切な友達を傷つけて、私の住んでいた世界を壊して、何もかも搾取して……そんな行為の上で成り立つ世界だから……忌避感が強いんだ」
『……』
「まぁ……ここに来ちゃった以上は仕方ない。早めにこの世界から出てしまえば済む話だ」
そうだよ、いつまでもこんな世界にいる意味なんて無い。ジャンゴを見つけて、ディアーチェ達にイクスを治してもらって、それでザジ達と一緒に世紀末世界へ帰るんだ。もとより次元世界に長居するつもりなんて無いのだから。
しかし海からクラナガンが見えるという事は、恐らくここは湾岸地区なのだろう。改めて随分流されたんだなぁと実感した。
『どうあれ街を見つけたのは良いですけど、寝床や明日の食事とかは大丈夫ですか?』
「一応、世紀末世界に行く前に持ってた次元世界のお金はそのまま持ってきてる。でもたくさんある訳じゃないから、無駄遣いは出来ないよ。それにマテリアルズやザジさん達と合流するには次元航行艦に乗る必要があるから、今の情勢で定期便が動いてるかはさておき、最低限の船賃や交通費ぐらいは手元に残しておかないと……」
『密航は普通に悪いことですからね。正規のルールで乗れる手段があるなら、そっちを遵守すべきでしょう』
それに次元世界における私の立場がどうなっているかわからない以上、目立つことはしない方が良い。そもそも人に迷惑をかける行為なんて以ての外、そんなことをする理由も決意も私には無い。非日常な出来事も、特別な力もいらない……マキナや大切な人たちと平穏に暮らせれば、他には何も求めないのだから―――。
「……?」
『どうしました? 急に海を見て……』
「何か……来る!?」
ある程度周期的な波の音の中から私の耳は異変を感じ、反射的にわき目も振らず一直線に内陸へ走り出した。直後……、
どっばぁああああ!!!
海の中から緑色の巨大な物体が大量の水しぶきを纏い
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