生存のエスケープ
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『おお〜! ではその機会が訪れるのを楽しみにしていますね』
イクスが私の料理を楽しみにしてくれていることは嬉しい。ただ、彼女の食事に対する興味はどこぞの腹ペコ王を彷彿とさせた。ディアーチェの料理の腕が高いことも考えると、王様という生き物は食事という行為に対し何かしら貪欲なのかもしれない。結局の所、人心を掌握するには胃袋を掴むことが最も効率が良いのかもね。
簡単なものとはいえ夕飯を終えた私はたき火の後始末をしてから、とりあえず寝泊りできる場所を探しに歩き出すことにした。日も沈んで暗くなりかけている時間帯に出歩くのは危険かもしれないが、実は一日ぐらいは大丈夫かと思ってポッドの様子を見た時、亀裂の部分から一気に崩壊して、ポッドは鉄くずの塊になってしまったのだ。元々老朽化していた所に爆発の衝撃を受けたせいで、耐久度は既に限界に達していたらしい。気絶していた私を陸地まで運びきったのは、むしろ奇跡に近いのだろう。
『シャロンって運命力はそこそこ持ってますよね。こう、生き残るための運はそれなりに高いというか……』
「サバタさんからもらったお守りを肌身離さず持ってるから、もしかしたらその効果かもしれないね」
『お守りですか……ガレアには、というよりベルカにはそういった願掛けのようなモノは無かったので、独特な文化として非常に興味深いです』
「それってカルチャーギャップ? それともジェネレーションギャップ?」
『私の場合は両方ですね。ま、世界が異なる以上、文化も異なるのは当然です。むしろ何の打ち合わせもしていないのに文化が全く同じだったら、その方が不自然でしょう。それも恐怖すら感じるほどに』
そりゃそうだ。世界が違うのに文化が同じだったら、それはヒトの多様性が否定されることを意味する。ヒトの遺伝子とかに“そういう文化を作る”と刻まれていて、誰もそのことを知らずにそう生きていくという定まった運命があるならば、ヒトに自由意志なんて存在しなくなる。“自由”は“運命に従う”とイコールで繋がることになり、ただ“そのように”、“そうなるように”違う世界でも同じ文化が芽生えるかもしれない。
異なる世界で、同じ文化、同じ人間、同じ出来事が同じ時期に発生する。まるでコピーされたように、“違う同じ世界”が存在する。……なんだかゾッとしてきたが、とにかくそんな世界に果たして価値はあるのだろうか? 同じ文化しか作らないヒトに、成長性を感じることなんてできるのだろうか? 外野が何か刺激を与えねば、ヒトに変化は生まれないのだろうか? 変化無き世界に、未来はあるのだろうか?
「な〜んて……こんなこと考えてても何の意味も無いか。それより寝るところを早くどうにかしないと……」
どうも街が近くにあるからか、星の光が見えにくい程度に空は少し明るかった
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