猫鬼
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が精一杯だ。
「結貴くん」
こんな幼い子供にも、俺の様子がおかしいことが分かったんだろうか。小梅ちゃんは俺の膝の上にちょこんと座ると、顎の下から覗き込むように俺を見上げた。
「あのね…奉くん、もうすぐかえってくるのよ」
一瞬、何を云っているのか分からず小梅ちゃんの目を見返した。
「奉くんがいないとき、おやしろの上にね、黒い鳥がいるの」
「……小梅ちゃん?」
「鳥さんはね、奉くんがいないときだけ、おやしろに近づけるのよ。鳥さんがいなくなったら、奉くんがかえるのよ」
今日のおやつの話でもするような口調で、小梅は妙な事を云ってにっこり笑った。…俺も『視る』性質の人間だ。俺の家系にはそういう人間がちょいちょい居る。姉貴は全然だが。
だが俺は『お社にいる黒い鳥』など見たことがない。…胸騒ぎに近いものを感じたが、この時の俺には深く掘り下げる余裕はなかった。…ただひたすら、子供が話す黒い鳥云々の話を鵜呑みにして安心したかった。
「奉なんかどうでもいいんだが…きじとらさんを連れて帰ってくるのかな」
「どうかなぁ…きじとらさんの行ったばしょは、奉くんとはちがうもの」
「……どういう、こと?」
「きじとらさんは、すごく遠くにいったの。ねこのおにに、されるのよ」
―――猫の鬼!?
「猫鬼」
背後から、聞き慣れた男の声がした。
「…すげぇな!!」
本当に、奉が帰って来た!俺は思わず奉と、小梅ちゃんを交互に見比べていた。
「壊れた扇風機か」
「うるっせぇ…いや、2週間も何処行ってたんだお前は!?きじとらさん見つかったのか!?」
いつか、小梅の話を真に受けて麒麟を探して1週間程姿を消していた時とは様子が違う。最後に見た時と同じ姿で、煙のように立ち現れて…そのまま消えてしまうのかと思う程、ただ静かに立ち尽くして居た。
「犬神ってのは、聞いた事あるだろう?」
こっちの問いは適当にスルーして、2週間も失踪していた男は滔々と話し始めた。
「ありゃ、大陸の方の『蠱毒』という外法の一種だ。日本では犬を使う犬神が有名だが…猫を使う方法もある。猫の鬼、と書いてビョウキと読ませる」
「…おい」
「いぬがみって、なに?」
「んー…昔の中国の人が使った、呪いだねぇ。よく懐いた犬を首まで埋めて、口の届かない所に食べ物を置いて飢えさせるんだ。そして犬の飢えがピークに達した瞬間を狙って、首を刎ね…いや、首ちょんぱにしちゃうんだねぇ。そして首は神社の境内など、人通りが多い場所に埋めて多くの人に踏ませる。すると、犬の幽霊がその人の云う通りに動いてくれる『しきがみ』っていう霊になるんだよ。この呪いは、日本でも流行ることになる」
「ひどい!!犬かわいそう!!」
「ほんとうだねぇ。昔の人はひどいねぇ」
「奉やめないか」
「ビョウキ
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