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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女Re.
第五話 『限界』の否定
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物なら気圧されてしまう程だ。一夏も若干体を固くするが、踏み留まる。

「……凄い圧だな、やっぱり天才は違うって事か。」

一夏が独り言のつもりで呟いたその一言はしかし、玉鋼のハイパーセンサーが捉え、あやまたず楓に伝えていた。

「天才……私はそんな大層な者ではありませんよ。………私に、あなたの欠片程の才能があれば、『こう』はなってはいなかったでしょう。」

シグナルが赤く点灯する。互いに武装ーーーーそれぞれの刀を展開、一夏は中段に構え、楓は全身の力を抜いたままだらりと下げている。

そして、シグナルが青に変わった瞬間だった。

「え?」

「ハアアァァァ!!」

開始と同時に正面から突っ込む楓。彩葉を上段に据え、唐竹割りに斬りかかる。

「どわっ!?」

開始直後の奇襲に一夏は対応出来ず、ギリギリ刀を間に滑り込ませるも、機体ごと地面に向けて弾き飛ばされた。

本来、格下相手に使う手では無いが、本気の楓は格下だろうが素人だろうが区別しない。

「クッ、この……!」

地面スレスレで体勢を立て直し、楓に意識を向け直すが既にいない。

「ハッ!」

「うわっ!?」

玉響で先回りしていた楓が再度彩葉を振るう。先程の様な大振りの一閃ではない。鋭く、速く、飛び散る火花の様に苛烈な連撃だ。

しかし、驚くべきは一夏。追い込まれつつも、不恰好ながら全て防いでいる。

(思っていたより剣の腕が戻っている……?いえ、篠ノ之さんの動きとはまるで違う。)

一夏に篠ノ之流剣術の動きが戻った訳ではない。感覚だけでその場で対応しているのだ。

(……才能では及ぶべくもないと思ってましたが、剣でも同じ、ですか。)

楓にとって、一夏の有り余る才能に嫉妬しないのか?と問われれば答えは否だ。才能を生かし、訓練・試合問わず急速に成長する一夏の姿は羨ましく、また妬ましくもあった。

しかし、では才能が欲しいか?と問われれば楓の出す答えはこれも否だ。楓にとって才能と言う名の【壁】は何時だって越えるべき対象で、或いは、不倶戴天の敵と呼んでも差し支えない程、彼女は才能による限界を否定し続けて来た。

膨大な経験値に裏打ちされた分析力や行動予測はもはや、予測を越え、予知の領域に片足を踏み入れている。

鍛え上げた反応速度は銃弾を見切るレベルに達し、磨き上げた空間把握はハイパーセンサーとの併用で彼女から死角を無くした。

研ぎ澄ました剣技は才能の壁にすら刃を突き立て、破らんばかりの腕前を誇る。

才能が無いから出来ない。誰もが絶望し、立ち尽くすその壁を無謀にも乗り越え、破り、また崩す。楓の半生は、その積み重ねだった。

故に、楓は止まらない。才能等という、最初からあったものの差では諦めない。


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