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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―終章
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あのお調子者で世話焼きでお人好しの彼が、このような取り乱しをするなど考えられない。言いしれない恐怖が、戦姫にも容易に伝染する。

「ああ!くそが!野郎!制御を放棄して自暴自棄になりやがった!血の一滴まで霊体にささげやがったな!?」

霊体とは何なのだ?そんな戦姫の疑問を払拭するかのように、ヴィッサリオンの視線は『目の前』を向いている。親の仇を見るような、凄まじい形相で――

それにしても……本当に信じがたい。
悪魔契約は血肉となる『人間』と、黒竜が吐き出す不可視の素粒子にして呪いの『霊体』がなければ成立しない。
もし、目の前の起きていることが本当に悪魔契約だとしたら、この大陸にまで霊体が浸透していることとなる。
『人』から『魔』に変貌したそれは、『力』の化身となって襲い掛かる。
『悪』の行いを以って――『魔』に染まる。
それすなわち……『悪魔』だ。
天を貫かんばかりの『火柱』・『雷柱』・『影柱』が立ち上る。頼りない光だが、されど太い支柱だ。

――黒き三つ首竜の悪魔が誕生した。契約は完了したのだ。――





『同時刻・黒船・レグニーツァ軍』





敵味方問わず、黒船での戦場は蜂の巣をつつかれたような騒ぎとなった。
戦場における熱気、怒号はあっという間に吹き散らされた。ちょうどオステローデと反対側に攻め込んでいるレグニーツァの戦姫は、この奇々怪々な光景を目にして、しばし茫然としていた。
血肉としてささげられた『男』は、戦姫や海兵によって打ち倒された敵兵の死肉を、霊体でもって喰らいながら、『人ならざる者』へ変貌を遂げていく。

――我先に逃げ惑う地獄絵図――

波が打ち広がるように混乱が人の意識を駆けだしていく。これではもはや戦姫の言葉も耳に届かないだろう。オステローデ、ルヴーシュ、レグニーツァ連合の3兵の敵前逃亡は早かった。
「……なんなんだ?あれは?」

黒髪の戦姫は、この世の光景を疑うような目で、遠い景色を見守っていた。その表情は余裕がなく、目を見開いている。
悪魔を包み込んでいた艶やかな柱が晴れて、その姿を確認した戦姫は、絶句してつぶやく。

「……ジル……二……トラ?」

黒竜の始祖たるその姿。黒船といい、黒き三つ首竜を模した『人ならざる者』といい――ジスタートをなめているとしか思えない怒りの炎。

「戦姫様!早くお戻りください!」

甲冑魚号で待機を命じられていたマドウェイとパーヴェルは、先ほどの光景を目の当たりにして、真っ先に戦姫のもとへ駆けつけた。
だが、戦姫は首を縦に振らない。

「私たちはここで『アレ』を食い止める。君たちは速く戻るんだ」
「そんな!?できません!戦姫様を置いて先に――」
「そうじゃない!早く戻ってこのことをルヴー
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