暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―終章
[3/16]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
オステローデ軍』





血なまぐさい風が走る――
嗅覚に違和感を覚えたヴィッサリオンは、振り回していたカタナを納めてあたりを見回す。

(……周辺の『大気』が集まっている?)

微細な感覚。大気が一点に集中する皮膚の報告。腰に帯びた『銀閃』が、ただただヴィッサリオンに警告する。―『悪魔』に気をつけろと―
そして――ようやく見つけた。ミツケタのだ。大気の集まる一点を――

男がいた。

黒船の水兵を吐き出した開口部より、一人の男がふらりと現れた。まるで、ジスタートの建国神話に出てくる『黒竜の化身』を思わせるような――
男は、髄液をみっともなくだらりと流している。
ふらふらと、おぼつかない足取りが、見るものの生理嫌悪を引き立てる。
ヴィッサリオンは、彼のことを知らない。だが、なぜか「知っている」ような感覚にさいなまれている。

〈心臓。心臓。竜の心臓は。シレジアはそこまできている〉

男の服の胸元から見えた、――外科手術――の傷跡。異常なまでに眼が見開かれており、虚空を覗いて凝視している。
こちら……俺を?いや、戦姫を?どこを見ている?
わからない。
わからないが、「彼を止めなければいけない」ということだけはわかっている。

〈――――――――。―――――、――――――。〉

男は何かをつぶやいた。雑音交じりのその声を。瞬間、そこで男の意識はぷつりと途切れる。
宝。宝。宝。竜の至宝はすぐそこに。
ほしい。ほしい。ほしい。
虚空とも、幻想ともとれる欲求。しかし、その男は気づいていない。
その男は、ただ『白鬼』と『老婆』に脅迫され、脳への『強欲』に対し、『服従』を指令されていた。
ただただほしい。『流星』を――
みつけた。あれだ。
ふいに、ヴィッサリオンと視線があった。それもつかの間――
掲げるは髪の毛一本から、血の一滴に至るまで。欲するは竜の至宝。願いをかなえる流星を――

ヴィッサリオンの脊髄が、絶叫を上げろと追い立てる。正確には、絶叫ではなく咆哮だ。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!」

獅子王(レグヌス)のごとき咆哮。魂をつかみ取るような轟は、戦姫を含む全員の意識をヴィッサリオンに傾けさせた。
だが!もう遅い!遅いのだ!
血判に類する死の言葉は、もはやだれにも止められない!





◇◇◇◇◇





「どうしたんだ!?ヴィッサリオン」

オステローデ戦姫の動揺めいた問いが、ヴィッサリオンの耳朶を打つ。首狩りの鎌は主の動揺に従って、しばし虚空運動を静止した。

「あれは――悪魔契約――だ!」
「……アクマ……ケイ……ヤク?」

やけを起こしたかのように、ヴィッサリオンは言い放つ。がしりがしりと黒髪をむしりながら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ