外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―終章
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なくなかったが、陛下の命令である以上、誰も逆らえない。皆は黙って謁見の間を退出した。
そして、彼は語った。自らの夢を。――誰もが笑って暮らせる国――を
夢を夢うつつと笑われたこともあった。
幻想と現実の区別ないと侮蔑されることもあった。本気で相手にされていない日々。そんな過去がまぶたの裏で、咲きかえるのを思い出す中、ヴィッサリオンは言葉をつづけていた。
「――人々は常に時代を行きかう流星のようなもの。銀の翼にのぞみを抱えて流れていく――そんな『銀の流星群』が着地する為には、どうしても『丘』が必要なのです」
流星を眺めるには、『丘』が――人々を集めるには『国』という共同圏下がなければならない、ヴィッサリオンは信じている。
さらに言い募る。その丘へたどり着くには、丘に至るまでの道を導いてくれる者、教えたまう者、正道、王道の旅路を選ぶものが必要だと。
詩人のような、彼のメッセージはなおも紡がれる。それはさながら神話の一文のように――
「人と人。流星群たる星々の輝きを、理想郷にもたらす先導者たれ――」
そう、我等の可能性はまだ飛べるはずだ。もっと……もっと遠く。流星のように遠くへ着地して……根を生やして大樹となれる。
「彼の国の名は……『銀煌舞』」※10
「……オーブ?」
ヴィクトールは、その流憐な響きに、わずかだけ息を飲んだ。
オーブ――宝の玉。
願わくは宝玉に映る『星々』に幸あらんことを――
「世界は律動のままに――人々は天譜を抱いて――『凱』歌を奏でる指揮者ゆえに――」
伝わるは彼の意志。そこに介入の余地など全くなかった。
「そうか……そういうことなら、あえて止めはしまい。ヴィッサリオンよ。気を付けて旅立つのだぞ」
◆◆◆◆◆
それが根拠かは王でさえも、むしろ誰にも分らない。それでも、時代の渦中でも竜具は求めたのだ。ジスタートの望む勇者を、ヴィッサリオンを。
竜具が選ぶのは『戦姫―ヴァナディース』
竜具が求めるは『勇者―ヴァルブレイヴ』
銀閃の名をあやかって、ヴィクトールはヴィッサリオンをこう敬称した。
――銀閃の勇者にして、流星の勇者――
その二つ名の高く輝く響きは、盗聴中の幼年期のヴァレンティナの耳に深く浸透していたのだった。
「あん……りみて……ど?」
容量を得ない舌足らずな言葉。それが、後のオステローデの主となる戦姫の幼いころ――
ヴァレンティナ=エステス。5歳。まだグリンカの姓を持たず、地位も権力もまだ『幻想』だった頃の話である。※11
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