第9話<共同墓地>
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た。
「結局、アンタ日本人?」
まだ言うか。
「ぽ……はい」
夕立の表情がこわばっていた。おいお前、冷や汗かいてないか?
「ぽ?」
分かったから
「……じゃ、行こうか?」
これ以上、夕立を放置するとデッカイ墓穴を掘りそうだ。私は半ば強制的に言葉を遮った。
軽く頷いた母親を先頭に私たちは駐車場を出ると、路地を横切って共同墓地へと歩き始めた。
夕立が周りの墓石を見ながら興味深そうに聞いてくる。
「ねぇねぇ、これ皆ぃんな、お墓なの?」
「そうだ」
そっか、この子は鎮守府から外にあまり出ていないのなら共同墓地なんて、なおさら見聞きする機会も少なかったのだろう。
「何だか黒くて真っ直ぐで艤装に似ているっぽい」
「……ああ」
そういう着眼点か?
「クールっぽい」
「……」
一体どこから、そういう発想が湧くんだろうな。
「まあ夏に墓石に抱きつけばいろんな意味で涼しいだろうけど」
誰も受けなかった。
共同墓地に入って最初の広場に井戸ポンプがあった。墓参に来た人が代わる代わる水を汲んでいる。
母は墓参道具の袋から、やかんを取り出した。
「今朝一度な、母さんが墓には参っとるけん。この花を捧げたら線香だけ上げればえぇだ」
軽く井戸の枝を動かしながら母親は、やかんに水を汲み始めた。
「ぽい?」
母を不思議そうに見ている夕立。
「お墓参りってのは簡単に掃除をしてから線香を上げて手を合わせるんだ」
私は説明した。
「……ぽ?」
分かってないな。
「イイよ、墓の前に着いたら、もう一回説明するから」
今はまだ分からなくても良いか。
「行くか」
水を汲み終わった母親を先頭に共同墓地の奥へ向かう。
「じゃ、こっちだ」
私も夕立に声をかけると母親の後から付いて行く。
共同墓地を見ていると小さい頃の記憶が蘇ってくる。
「そういえば小さい頃は、よくこのお墓で遊んだな」
前を歩く母親が頷く。
「従兄弟のイクちゃんが近くに居ったけんな(いたからな)」
改めて見ると、この墓地も狭く感じる。
「ココも狭かったんだな」
「ぽい?」
不思議そうな夕立、無理もない。
お盆が近いから共同墓地の他のお墓にも、たくさんの人が参っている。時々、私たちの姿を見て敬礼をする退役軍人らしき老人がいるのは少々、困った。いちいち返礼をしなければならない。こんなことなら私服で来た方がラクだったな。
やがて目的の場所、母方の墓前に着いた。母親は手際よく花の水を取り替えている。それから余った水を墓石の上からかけている。
夕立はその動作を不思議そうに、でも興味深く眺めていた。
「お水かけるっぽい、洗っているの?」
「い
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