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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十八話 軍法会議
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本当の意味で受け入れようとしなかったことで嫌気がさしていたのだと思います。大佐が言葉を続けました。
「それに総司令部の作戦案についてはその問題点を七月の末に指摘しています。それを修正していない人達の方が問題ではありませんか?」
検察官の表情が歪みました。そして傍聴席からはまた笑い声が上がります。
これまでの審理で作戦案の修正を拒んだのはフォーク中佐とロボス元帥である事が判明しています。検察官にしてみればせっかく見つけた突破口が自分の失点になって返ってきたのです。表情も渋くなるでしょう。検察官が表情を改めました。
「十月に行われた将官会議についてお聞きします。会議が始まる前にグリーンヒル大将から事前に相談が有りましたか?」
「いいえ、有りません」
その言葉に検察官の目が僅かに細まりました。
「嘘はいけませんね、大佐。グリーンヒル大将が大佐に、忌憚ない意見を述べるように、そう言っているはずです」
「そうですが、それは相談などではありません。小官が普段ロボス元帥に遠慮して自分の意見を言わないのを心配しての注意です。いや、注意でもありませんね、意見を述べろなどごく当たり前の事ですから」
検察官がまた表情を顰めました。検察官も気の毒です、聞くところによると彼はこの軍法会議で検察官になるのを嫌がったそうです。どうみても勝ち目がないと思ったのでしょう。ですが他になり手が無く、仕方なく引き受けたと聞いています。
「大佐はどのように受け取りましたか?」
「その通りに受け取りました。将官会議は作戦会議なのです、疑義が有ればそれを正すのは当然の事です。そうでなければ不必要に犠牲が出ます」
検察官がヴァレンシュタイン大佐の言葉に一つ頷きました。
「ヴァレンシュタイン大佐、大佐は将官会議でフォーク中佐を故意に侮辱し、会議を終了させたと言われています。今の答えとは違うようですが」
低い声で検察官が問いかけます。勝負所と思ったのかもしれません。
傍聴席がざわめきました。この遠征で大佐が行った行動のうち唯一非難が出るのがこの将官会議での振る舞いです。私はその席に居ませんでしたが色々と話は聞いています。確かに少し酷いですし怖いと思いました。
大佐は傍聴席のざわめきに全く無関心でした。検察官が低い声を出したのにも気付いていないようです。穏やかな表情をしています。
「確かに小官はフォーク中佐を故意に侮辱しました。しかし将官会議を侮辱したわけではありません。フォーク中佐とロボス元帥は将官会議そのものを侮辱しました」
「発言には注意してください! 名誉棄損で訴えることになりますぞ!」
検察官がヴァレンシュタイン大佐を強い声で叱責しました。ですが大佐は先程までとは違い薄らと笑みを浮かべて検察官を見ています。思わず身震いしまし
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