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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十八話 軍法会議
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ません」
その言葉に傍聴席から笑い声が起きました。検察官が渋い表情で傍聴席を睨みます。
「静粛に」
シトレ元帥が傍聴席に向かって静かにするようにと注意しました。検察官が幾分満足げに頷きながら傍聴席から視線を外しました。そして表情を改めヴァレンシュタイン大佐を見ました。
「少し発言には注意してください、場合によっては法廷侮辱罪が適用されることもあります」
「小官は宣誓に従って真実を話しているだけです。侮辱するような意志は有りません」
ヴァレンシュタイン大佐の答えに検察官がまた渋い表情をしました。咳払いをして質問を続けます。
「大佐はグリーンヒル大将によって総旗艦アイアースの艦橋に席を用意された。そうですね?」
「そうです」
「当然ですがグリーンヒル大将に感謝した、そうですね」
「いいえ、それは有りません」
「?」
「余計なことをすると思いました。小官は無駄飯を食べるのが好きなのです」
そう言うと大佐はクスクスと笑い出しました。
傍聴席からもまた笑い声が上がります。一番大きな声で笑っているのは私の隣にいるシェーンコップ大佐です。この人、ヴァレンシュタイン大佐と親しいのですが性格も何処か似ているようです。根性悪で不謹慎、大佐はヴァレンシュタイン大佐を心配するより面白がっています。
シェーンコップ大佐も第三回の軍法会議に証人として出廷していますがその証言は酷いものでした。どう見てもロボス元帥と検察官を小馬鹿にしたもので何度も審理が止まったほどです。
検察官が傍聴席を、シェーンコップ大佐を睨む前にシトレ元帥の太い声が法廷に流れました。
「静粛に」
検察官はシェーンコップ大佐を一瞬睨んだ後、視線をヴァレンシュタイン大佐に戻しました。厳しい目です、一方大佐は笑いを収め生真面目な表情をしていました。多分猫を被っています。
「不謹慎ではありませんか? 作戦参謀でありながら仕事をしないのが楽しいなどとは。その職務を果たしているとは思えませんが?」
少し粘つくような口調です。ようやく突破口を見つけた、そう思っているのかもしれません。
「小官が仕事をすると嫌がる人が居るのです。小官は他人に嫌がられるような事はしたくありません。特に相手が総司令官であればなおさらです。小官が仕事をしないことで総司令官が精神の安定を保てるというなら喜んで仕事をしません。それも職務でしょう」
そう言うと大佐は僅かに肩をすくめるしぐさを見せました。その姿にまた傍聴席から笑い声が起きました。
嘘です、絶対嘘。必要とあれば大佐は周囲の思惑など無視して動きます。大佐が仕事をしなかったのはロボス元帥に遠慮したからではありません。仕事をする気が無かったからです。馬鹿馬鹿しかったのだと思います。それと恥ずかしい話ですが私達が大佐を
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