愛しているから
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多少の迷いはあったものの、今の状況を打破するにはこれしかないと腹をくくり、仲間たちを攻撃し、評議院へと引き渡した青年。それから彼は、ミネルバの言っていた通り執行猶予を得て、剣咬の虎の一員となったのであった。
そして現在・・・
「そういえば、お前まだ牢に入るんじゃなかったのか?」
「ホッパーさんに助けてもらった。今の私のリーダーね」
ようやく以前と同じように会話ができるようになってきた二人は、近くのベンチに腰掛け近況を話し合っている。
「他の奴等は?」
「・・・ハルとユウは死んじゃった」
「え?」
脱獄したのは一人だけなのかと確認したところ、信じられないような発言に思わず耳を疑う。それに対しイザベリーは、悲しそうな表情を浮かべていた。
「ハルは元々病気だったみたい。でも、私たちも知らなかったし、本人も言い出さなかったから・・・捕まって二ヶ月目にポックリと逝っちゃった」
「マジかよ」
あまりの出来事に罪悪感が激しくのし掛かってくる。さらに、追い討ちをかけるように彼女はメモを渡す。
「あと、これはユウのそばから見つかったんだって」
メモを受け取り、中身を確認する。そこには血の文字で、こう書かれていた。
《お前は絶対許さない、呪い殺してやる》
最後の怒りを込め、自ら命を絶ったというかつての仲間に、さらに心が締め付けられる。だが、そんな彼にイザベリーは優しく話しかける。
「私はグランのこと、全然恨んでないよ」
「は?」
彼女からは一体何を言われるのかとビクビクしていたところでのその発言に、彼は耳を疑った。
「グランにはずっとお世話になったし、あの時のグランの行動が私たちを助ける唯一の手段だったんだよね」
実はイザベリーは牢の中でこうなった経緯を聞いていたらしい。そのため、自分たちを助けるために悪役になった彼を恨むことはできないと、そう思っているらしい。
「ヒナもそのこと知ってたから、逃げた先できっとグランのことを思ってるんじゃ――――」
「だったら!!」
勢いよく立ち上がり、隣に座る少女を見下ろす。彼の拳はプルプルと震えていた。
「だったらなんでまたこんなことしてるんだ」
自分のやった行動の意味を知っていながら、またしても悪い道を突き進もうとして入る彼女に、怒りが込み上げてくる。そんな感情を抱いてはダメだと、自分でもわかっているのに。
「なんで?そんなの簡単だよ」
彼と同じように立ち上がると、青年を下から見上げるように視線を上げ、ニッコリと微笑む。
「私たちを引き裂いた、この国を変えたいの」
「引き・・・裂いた?」
引き裂いた
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