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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
138部分:第十二話 劉備、先祖伝来の宝剣を手放すのことその十一
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第十二話 劉備、先祖伝来の宝剣を手放すのことその十一

「けれど」
「けれど?」
「人を疑うことも知らないのね」
「そういうのは好きじゃないし」
「好きじゃなくてもそれで貴女の身に何かあったらどうするのです」
 それを咎めるのだった。
「そうなっては何もなりません」
「それでもそういうのは」
「わかりました。では桃香」
 観念したような顔と言葉だった。
「貴女に天命があるのならそれに導かれて小難は避けられるでしょう」
「歩いていけばいいの?このまま」
「そうです。では行きなさい」
 また娘に告げた。
「いいですね」
「じゃあ行って来ます」
 こうして劉備はまた旅に出た。そしてそれは運命に導かれる大いなるはじまりの旅だった。彼女もまた運命の大きなうねりの中にいたのだ。
 また闇の中に彼等がいた。そうしてだった。
「そうですか。剣がですか」
「あの娘の手から離れた」
 闇の中での話だった。
「そしてどうやら」
「どうやら?」
「袁本初の元に渡りそうだ」
「あの娘のところにですか」
「あの娘はこそ泥の類を許しはしない」
 このことも話された。
「必ず捕まりだ。剣はあの娘のところに入る」
「劉玄徳のところから離れればそれでよいな」
 老人の声だった。不気味さと邪悪さに満ちた声だった。
「それでのう」
「そうね。それでいいわね」
「あの娘しか使えないし」
 若い女と少年の声だった。
「袁紹が持っていても何の意味はないし」
「それならね」
「それでだけれどな」
 若い男の声だった。
「今ミヅキと刹那はどうしているんだ?」
「南に行っておるようじゃ」
 老人の声が答えた。
「遥か南の方にのう」
「そこか」
 別の若い男の声だった。
「そこに行ったのか」
「南蛮ですね」
 知的な、落ち着いた響きの言葉だった。
「あの地にですか」
「ああ、南蛮っていうのか」
 若い男の言葉がここで弾むものになった。
「あそこは」
「はい、南蛮といいます」
「この国の周りの異民族は北や西にいるだけじゃないからな」
「そうか。じゃあ奴等も使えるな」
「そうね」
「面白い人間達かも」
 若い男の次に女の声と少年の声が応えた。
「面白いことになりそうね」
「僕達が思っているよりも」
「周辺だけではありませんしね」
 また落ち着いた声が言ってきた。
「さて、それでは」
「俺はまた動くな」
「わしもそろそろ動くかのう」
 若い男と老人の声だった。
「バイスとマチュアもよくやってくれてるみたいだしな」
「たまには働くのもいいことじゃ」
「頼んだぞ」
「それではな」
 こう話してだった。闇の中から気配が消えた。それは少しずつ大きくなろうとしていた。


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